【専門医が解説】糖尿病の食事療法:ロカボでの糖質制限|高崎市 乾小児科内科医院|アレルギー科・循環器内科(心臓血管内科)

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【専門医が解説】糖尿病の食事療法:ロカボでの糖質制限

2020.09.25

【専門医が解説】糖尿病の食事療法:ロカボでの糖質制限

 
 

糖質制限という言葉は、どこかで耳にしたことがある方も多いかと思います。文字通り、糖質の摂取を制限する食事方法で、ダイエット効果があると話題になっています。

糖尿病は、肥満が一因となっていることもあり、糖質制限は食事療法として注目されています。

今回は糖質制限について解説していきたいと思います。

 

3大栄養素

食事の基本はバランスよく栄養を摂ることですが、3代栄養素として「糖質」「タンパク質」「脂質」があります。

糖尿病患者さんの場合、推奨されている栄養素のバランスは 糖質:タンパク質:脂質=50-60%:15-20%:20-30%程度となります。

 

1日の摂取カロリーの目安

1日の摂取カロリーは、標準体重×身体活動量で計算できます。

標準体重(kg)は[身長(m)]2×22

身体活動量(kcal/kg標準体重)は程度によって
25-30 軽い労作(デスクワークが多い職業等)
30-35 普通の労作(立ち仕事が多い職業等)
35-  重い労作(力仕事が多い職業等)

となっています。

例えば、身長 170cmのデスクワーク中心の職業の方であれば
標準体重は1.7×1.7×22=63.58kg
身体活動量は25-30
となるので、

63.58×25-30=1590-1907kcalと計算できます。

 

糖質制限とは

糖質制限とは、3大栄養素の中の糖質の摂取を制限する食事法のことを指します。

炭水化物から食物繊維を差し引いたものを糖質といいますが、ほぼ炭水化物=糖質と考えて問題ありません。

糖質はケーキやお菓子、ジュースなどの甘いものだけでなく、パンやご飯、麺類などにも多く含まれています。

糖質は三大栄養素の中でも最も血糖に変わる割合と速度が高く、食後の血糖値を上昇させやすいです。糖質を栄養として体内に取り込むために、インスリンというホルモンが膵臓から分泌されますが、糖尿病の方は、インスリンの分泌量が不足していたり、働きが弱まったりしているため、取り込みに時間がかかります。

一度に多くの糖質を取り過ぎてしまうと、処理が追いつかず、ますます血糖値が上がってしまい、糖尿病を悪化させてしまう一因になります。

【専門医が解説】糖尿病の食事療法:ロカボでの糖質制限

そのため、1回の食事で摂る糖質の量を制限することで血糖コントロールを改善させよう、というのが糖質制限による糖尿病食事療法の考え方です。

 

糖質制限とカロリー制限

かつて糖尿病の食事療法としては、総摂取カロリーを制限するカロリー制限が重視されたこともありましたが、先ほどご紹介した総カロリー量と3大栄養素の比率を毎食ごと厳密に守るのは、あまり現実的でなく、「言われてはみたものの、実際には実行できない」ことも少なくありませんでした。

また、極端な糖質制限も一時的には可能であっても、空腹感や、満足感の足りなさ、などからなかなか続かず、オススメできません。

さらに極端に糖質を制限したことでエネルギーが不足した場合、不足したエネルギーを補うため、自分の筋肉を分解してエネルギーを作ります。

すると、筋肉量が減って基礎代謝が落ちてしまうことで結果的に太りやすいカラダになってしまい、リバウンド…ということにもなりかねません。

 

糖質制限は頑張り過ぎずロカボで

食事療法は一時的に歯を食いしばって頑張るものでなく、無理なく続けていくことが重要です。

そこで近年注目されているのが緩やかな糖質制限「ロカボ」です。ロカボとはローカーボネイトの略でカーボネイト=炭水化物≒糖質を制限した食事のことをいいます。

【専門医が解説】糖尿病の食事療法:ロカボでの糖質制限

このロカボのマークがついた食品、よくみるとスーパーやコンビニでも見つけることができます。

一般的に、日本人の1日あたりの糖質摂取量は約300gと言われています。

1日3食の場合、1食あたり100gになり、おにぎり2個と野菜ジュースに相当します。

これを少し抑えていくわけですが、どの程度を目標とするべきでしょうか。

日本人の食事摂取基準(DRI)2015 年版は人体に必要な糖質の最低必要量を1日あたり100 gとしています。目安として150g程度を糖質制限として提唱する方もいますが、どの程度が適切かは、それぞれの体型や病状などによっても異なるため一概には難しいです。

個人的には、メタボ体型で糖尿病治療を受ける方の多くは、日本人の平均を上回る「糖質過剰摂取」の状態にあるため、厳格な制限というよりは、まずは日頃の食生活を見直して、炭水化物の取り過ぎがないかどうか確認してみるのが第一歩だと思います。

 

栄養成分表示を確認する習慣を!

糖質制限の第一歩は、自分がどれくらいの糖質をとっているかを把握、「見える化」することです。

外来で「糖分の取りすぎに気をつけましょう」というお話をすると自分はお菓子もジュースもあまりとらないから問題ないはずだ、という方がおられます。

かなりのメタボ体型になるからには、なにか理由があるはずだとお話を聞いてみると、ラーメン、パスタ大好き、ご飯はいつも大盛り、といったことはよくあります。

どんな食品でも買ったり、注文したりするときに、これはどれくらいの糖質量だろうか、と意識することは非常に重要です。

意識することで、知らず知らずのうちに糖質を取り過ぎてしまうことが避けられます。

糖質量を把握するためのアプリや糖質量が一覧になっている本などもたくさんありますので、活用し、普段飲食しているものの、大まかな糖質量を掴んでいくといいでしょう。

慣れてくると、これは糖質の多い食品だから注意しよう、逆にこの食品は糖質があまり多くないから量を気にせず摂って大丈夫、といったことが感覚的にわかるようになります。

 

ビール、梅酒よりも焼酎、ウイスキー、ワイン

糖尿病がある方は、お酒をほどほどにすることが推奨はされていますが、何を飲むかも重要です。

糖質量に着目して、一般的なお酒を比較してみましょう。

種類 ビール
350ml
日本酒
1合
白ワイン
グラス1杯(100g)
赤ワイン
グラス1杯(100g)
焼酎
1合
ウイスキー
シングル
30g
梅酒
シングル
30g
糖質量 10.9g 8.8g 2g 1.5g 0g 0g 6.2g

ライザップ糖質量ハンドブック(日本文芸社)より

こうしてみると、同じお酒でもずいぶん糖質量が違うことがわかります。 「ビール腹」なんて言葉がありますが、糖質量の多いビールを大量に飲むと太りやすいわけですから納得です。

逆にワインや焼酎、ウイスキーなどの蒸留酒は糖質量が少ないため、同じお酒を楽しむのであれば、これらの方が血糖値は上がりにくく、太りにくくもある、ということになります。

 

まとめ

・糖質制限は食事などでとる糖質量をコントロールすることで血糖値の上昇を抑える食事療法
・食品ごとの糖質量を確認し、実際に自分が摂っている糖質量を把握しよう
・低炭水化物な食品をうまく利用し、糖質の過剰摂取を見直そう
・無理なく続けられるバランスのよい食生活を目指しましょう

 

© 2020 Inui pediatrics and internal medicine clinic

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