【糖尿病専門医が解説】低血糖の症状・原因・検査・対処法|高崎市 乾小児科内科医院|アレルギー科・循環器内科(心臓血管内科)

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【糖尿病専門医が解説】低血糖の症状・原因・検査・対処法

2020.12.18

【糖尿病専門医が解説】低血糖の症状・原因・検査・対処法

 
 

糖尿病は、血糖値が高くなる病気ですが、お薬で治療をしていると血糖値が下がりすぎる「低血糖」になることがあります。また、糖尿病以外の病気が原因でも低血糖を起こすこともあります。

低血糖は様々な症状を起こすだけでなく、心臓や脳の病気や認知症などにも関連しています。

今回は、低血糖についてまとめていきたいと思います。

 

低血糖とはなにか

低血糖とは、血糖値が低くなり、血糖値を正常範囲に戻すのにブドウ糖の内服などが必要となる状態です。

健常者では通常、空腹時の血糖値は、ホルモンなどによって調節され70mg/dlから99mg/dlの間に保たれています。

しかし、何らかの原因から血糖値が70mg/dl未満となると、動悸や、頭痛、眠気などの症状を起こし、対処が必要な状態となります。これが、「低血糖」です。

 

低血糖の症状

【糖尿病専門医が解説】低血糖の症状・原因・検査・対処法

低血糖の症状としては、

  • ・発汗
  • ・不安
  • ・動悸(ドキドキする)
  • ・頻脈(脈がはやくなる)
  • ・手や指のふるえ
  • ・顔が青くなる(顔面蒼白)
  • ・頭痛
  • ・目のかすみ
  • ・空腹感
  • ・眠気

などがあります。

低血糖で最初に現れる症状は患者さんごとに異なります。自分に起こりやすい低血糖の症状を把握することで素早く対処できるとよいでしょう。

低血糖になると、血糖を上げるためのホルモンが働きます。
例えばアドレナリンは肝臓に作用して、グリコーゲンの分解、肝臓での糖新生の増加を起こし、さらに腎臓に作用して腎臓からの糖新生を促進させることで、血糖値を上昇させます。

しかし同時に、アドレナリンの分泌は、動悸、振戦、不安感などを引き起こします。

また、アセチルコリンの分泌は、ひどい空腹感、しびれ感、発汗などを起こします。さらに中枢神経障害として、思考力の低下、行動異常、痙攣、昏睡などの症状が現れます。これらは血糖値の低下に対する警告症状だと考えられています。

重度の低血糖では、意識障害が長引き、呼びかけに反応しなくなったり、けいれんを起こしたりしてしまうこともあり、注意が必要です。

 

症状を感じないこともある

低血糖を頻回にくり返していると、低血糖に対する警告症状を起こす交感神経系・副腎系の反応が低下し、低血糖になっても動悸や発汗、ふるえなどの症状がでない状態になることがあります。

また、糖尿病による重度の自律神経障害のある方も、低血糖時の体の防御反応が乏しい場合があります。

これを「無自覚性低血糖」といいます。

無自覚性低血糖があると、軽度の低血糖の状態で気づくことができないため、血糖値がかなり低下してしまい意識障害や昏睡などを伴う重症低血糖をきたしやすくなります。

 

低血糖の原因

低血糖は、糖尿病で薬剤治療中の方に多く認められます。また、インスリン分泌に関わるそのほかの病気で起きることもあります。

 

低血糖を起こしやすい薬

糖尿病の薬には、様々な種類がありますが、作用機序により低血糖を起こしやすい薬と起こしにくい薬があります。

低血糖を起こしやすい薬は、インスリン製剤、スルホニル尿素薬(グリベンクラミド、グリクラジド、グリメピリドなど)、速効型インスリン分泌促進薬(ナテグリニド、ミチグリニド、レパグリニド)です。

スルホニル尿素薬や速効型インスリン分泌促進薬は、膵臓のβ細胞に直接作用し、血糖値に関係なくインスリン分泌を促す薬のため、インスリンの分泌量が過剰になる場合があります。

一方で、以下の血糖降下薬は、低血糖を起こしにくいです。

  • •ビグアナイド薬
  • •チアゾリジン薬
  • •αグルコシダーゼ阻害薬
  • •DPP-4阻害薬
  • •SGLT2阻害薬
  • •GLP-1製剤

ただし低血糖を起こしにくい薬でも、インスリンやスルホニル尿素薬、速効型インスリン分泌促進薬と併用すると、低血糖をきたす可能性が上がります。

いずれにせよ糖尿病のお薬を飲めば、どの薬でも低血糖のリスクはありますので、対処法に関しては一度確認しておくとよいでしょう。

 

こんなときに低血糖を起こしやすい

低血糖は、どのような時に起こしやすいのでしょうか。
よくある状況としては、

  • ・風邪をひいたりして食事があまりとれないとき
  • ・薬を飲んだ後、長時間食事がとれなかったとき
  • ・間違った薬の使い方をしてしまったとき
  • ・激しい運動をした後

などがあります。

(1) 風邪をひいたりして食事があまりとれないとき
食事がいつもよりとれないのに、薬は同じ量を使うと、血糖値が下がりすぎてしまうことがあります。風邪をひいたりして食事があまりとれない時は、薬の使い方をどのようにした方がいいのか、あらかじめ主治医の先生に確認しておくのがよいでしょう(これをシックデイルールといいます)。

(2) 薬を飲んだ後、長時間食事がとれなかったとき
血糖値を下げる薬を使用しているのに急な仕事や予定が入ってしまうなどして、長時間食事がとれないと低血糖を起こしてしまうことがあります。

時間が空いてしまうことがわかっている場合には、アメや軽食などを補給し低血糖を避ける工夫が必要です。

また、お仕事のスケジュールなどで定期的に食事をとるまでの時間が空いてしまうことがわかっている場合には、お薬の使い方を調整する必要があります。

(3) 間違った薬の使い方をしてしまったとき
飲み薬の場合、量を間違えて多く使いすぎてしまったり、食前の薬を別の時間に飲んでしまったりなどがあります。

認知症がある場合には、十分な薬の管理ができずお薬を多く使いすぎてしまうことがありますので、周囲に薬剤管理のサポートができる方がいない方が、低血糖を繰り返す場合には特に注意が必要です。

この場合には、低血糖を起こさないことを重視し、通常よりも血糖値の管理目標を高め(緩め)に設定する必要があります。

(4)激しい運動をした後
運動により筋肉にグルコースが取り込まれるため、運動中、または、運動後や翌朝に低血糖をきたす場合があります。

この現象は、インスリン分泌の枯渇した1型糖尿病の患者さんでよく認められます。

重度の労作や運動をする場合には、体を動かす前に、補食をすべきかを、主治医の先生に確認しましょう。

 

空腹時低血糖

健康な人では、数日に及ぶような長時間の絶食や持続的な激しい運動を行っても、あまり低血糖は発生しません。

しかし以下のような病気や病態の人は、食事をとらずにある程度の時間が経過すると、適度な血糖値を維持できなくなります(空腹時低血糖)。

  • ・抗不整脈薬(シベンゾリンなど)、抗菌薬などの薬剤による影響
  • アルコールの飲みすぎ(肝臓でのブドウ糖産生が抑制される)
  • ・肝臓、腎臓、心臓、膵臓の病気
  • ・血糖を上昇させるホルモン(例:コルチゾール)が低い場合
  • ・特定の腫瘍 

空腹時低血糖は、長時間の絶食後に生じることが多いです。 糖尿病の治療をしていないのに関わらず、絶食後や朝食前に低血糖の症状を認めたら、思わぬ病気が隠れている可能性がありますので医療機関を受診しましょう。

 

低血糖の検査

低血糖の診断の基本は、低血糖の自覚症状が出現している時に、血糖値を測定することです。

自己血糖測定器を持っている場合には、低血糖を疑う症状を感じたら、血糖値を測定してみましょう。

高齢者などで、ご本人自身での血糖測定が難しい場合や意識障害を起こして自己血糖測定が難しくなってしまう場合には、ご家族が血糖測定のやり方を把握しておくのがよいでしょう。

低血糖が頻回に生じる場合や無自覚性低血糖や夜間低血糖などが疑われる場合には、持続糖濃度測定装置(Continuous Glucose Monitoring system: CGMS)を用いて、血糖の推移を調べます。

空腹時低血糖を疑った場合は、問診、身体診察、内服薬の確認、ホルモン検査、エコー検査などを行います。

空腹時低血糖の精密検査として、絶食によって低血糖を起こすかどうか、血糖値やホルモンの値を評価する絶食試験を行う場合もあります。

 

低血糖時の対処法

低血糖の症状を感じたら、可能であれば、すぐに自己血糖を測定し、低血糖(血糖値70mg/dl未満)かどうかを確認しましょう。

低血糖の場合や血糖値の確認が難しい場合には、手元に10gや20gのブドウ糖があれば内服します。ブドウ糖が手元にない場合には、ジュースなど糖分を含むものをとります。

このとき、すぐに血糖値が上がるように、消化吸収に時間のかかる炭水化物(パンやお米など)ではなく、血糖値の上がりやすい、グルコース、または、砂糖を含む食品をとることが重要です。

糖尿病でお薬の治療を受けている方は、ブドウ糖は常に持ち歩いているとよいでしょう。

糖質の摂取により血糖値がいったん上昇しても、30分ほどでふたたび低血糖が生じる場合もあります。低血糖からの回復後は早めに食事を取るとよいでしょう。また、血糖値が安定するまでしばらくは注意しましょう。

何度ブドウ糖をとっても低血糖を繰り返してしまう場合(遷延性低血糖)には、医療機関を受診した方がよいでしょう。

意識障害によって、口から糖分の摂取が不可能な場合には、ご家族や医療機関での対処が必要となります。

ご家族が低血糖に気づいた場合は、誤嚥のリスクもあることから無理にブドウ糖をとらせようとせず(安全にとれそうならとっても構いません)、救急車を呼ぶのがよいでしょう。

また、インスリン治療中で低血糖の危険性が高い患者さんには、グルカゴンという血糖値を上げる注射を準備して、ご家族による筋肉注射を指導する場合もあります。指導を受けている場合には、グルカゴンの注射をするとよいでしょう。

 

低血糖は何が問題か?

低血糖があると、短期的にも長期的にもさまざまな弊害を起こします。

 

短期的な問題点

■生活に制限がかかる
低血糖症状が起こると、気分が悪くなるため、日常生活の中で行動が制限されたり、意欲がなくなったりしてしまいます。

■血糖コントロールが悪化する
血糖値が下がると、体内で血糖値を上げるホルモンが増えて、逆に高血糖が助長されることがあります。

また、低血糖を避けるために、薬やインスリンの量を減らしたり、ついつい食べ過ぎてしまったりして、治療効果に悪影響が出ることもあります。

 

長期的な問題点

■心臓や脳の病気が起こりやすくなる
低血糖が血管にストレスを与えることなどによって、不整脈、狭心症、心筋梗塞などの病気が誘発される、あるいは悪化することが報告されています。

■認知症が起こりやすくなる
低血糖、特に重症低血糖が多いほど、認知症発症のリスクが高くなることが報告されています。

■無自覚性低血糖を起こしやすくなる
低血糖は繰り返すと、徐々に体が低血糖に慣れていきます。そして、自覚症状が乏しくなり、無自覚性低血糖をおこします。自覚症状が出ないと、低血糖が重症化してしまい危険です。

 

まとめ

  • ・低血糖は血糖が7 0mg/dl以下に下がってしまった状態で、症状を自覚したらブドウ糖を飲むなどの対処が必要。
  • ・低血糖を起こしたら原因を確認し、再発の防止をしましょう。
  • ・低血糖は体にとって負担になるため、起こさない工夫が重要です。
 

© 2020 Inui pediatrics and internal medicine clinic

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