糖尿病の新薬ツイミーグ(イメグリミン)の効果と使い方|高崎市 乾小児科内科医院|アレルギー科・循環器内科(心臓血管内科)

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糖尿病の新薬ツイミーグ(イメグリミン)の効果と使い方

2021.08.10

 
 

先日、従来の糖尿病治療薬とは全く違った新しい作用機序をもつツイミーグ(イメグリミン)が世界で初めて日本で承認となりました。

現在、経口糖尿病治療薬としては、8種類の薬剤がありますが、既存の血糖降下薬とは異なる構造と、インスリン抵抗性の改善とインスリン分泌能の改善という2つの血糖降下作用をもっています。

今回は新薬、ツイミーグについてまとめていきたいと思います。

 

ツイミーグの作用機序・効果

ツイミーグは、ミトコンドア機能を改善させることで糖尿病への治療効果を発揮すると考えられています。

糖尿病でミトコンドリア??なんのこっちゃ??といった感じですが、ミトコンドリアは、細胞の活動に必要なエネルギーの大部分を産生する、いわば発電所であり、ミトコンドリア機能を改善することでインスリンを分泌する機能が改善することも報告されています。

ツイミーグは、グルコース濃度依存的なインスイリン分泌を促す膵作用と、筋肉および肝臓での糖代謝を改善する膵外作用という2つの作用をもつ薬剤なのです。

2つの作用があるから「対(ツイ)」ミーグなんですね!

ほんとかなぁ…

ツイミーグの働きについてもう少し詳しくみていくと、主に4つの作用があります。

 

①グルコース濃度依存的なインスリン分泌促進(膵作用)

NAD+は、生体の酸化還元反応において中心的役割を果たす補酵素です。 糖尿病ではインスリン分泌を担っている膵臓にあるβ細胞のNAD+量の減少が、インスリン分泌の低下につながると考えられています。

ツイミーグは、NAD+を増加させるなどの働きにより、膵β細胞において細胞内のCa2+が増加します。

その結果、ツイミーグはブドウ糖(グルコース)に対して、濃度依存的にインスリン分泌促進作用を示します。

つまり、血糖値が低いときにはインスリン分泌を促進せず、血糖値が高いほどインスリン分泌を促進する、低血糖のリスクが極めて少ない薬剤といえます。

 

②膵β細胞保護

ミトコンドリア機能を改善させることにより、細胞に障害をきたす活性酸素の産生を抑え、膵β細胞を守る働きが期待されています。

過去の研究ではβ細胞が障害され脱落することが知られている特殊なラットにツイミーグを経口投与した結果、単位膵臓重量あたりのβ細胞量が増加することが報告されています。

日本人の膵β細胞機能(インスリン分泌能)は欧米人に比べるとやや弱く、過食や運動不足などの生活習慣の乱れによる負担増加によって、このインスリン分泌機能が破綻し、糖尿病が発症すると考えられています。

日本人はあまり太っていなくても、糖尿病が発症しやすい原因はここにあります。

2型糖尿病は膵β細胞機能の低下とβ細胞の量が徐々に減っていく進行性の病気であり、これこそが糖尿病を基本的には完治させることができない大きな理由のひとつなのです。

ツイミーグは、低下してしまった膵β細胞を回復させる効果が期待される点で画期的な薬剤なのです。

 

③糖新生の抑制(膵外作用)

ツイミーグは、インスリンシグナル(インスリンの働きをよくする信号)を改善させ、肝臓での糖新生を抑制します。

糖新生は、脂質やアミノ酸など糖質以外の物質からグルコースを合成するはたらきで、これを抑えることで血糖コントロールを改善させます。

既存の糖尿病薬ではビグアナイド薬(メトホルミンなど)が糖新生抑制作用をもつことが知られています。

 

④糖取り込み能の改善(膵外作用)

インスリンは、ブドウ糖を細胞内に取り込ませることで血糖値を低下させます。骨格筋は、血液中の糖を取り込む最大の臓器であり、食後に上昇する血糖の80%を取り込んでいます。

この作用が十分に機能しなくなることを「インスリン抵抗性」といいます。

ツイミーグは、骨格筋において、インスリンシグナルの改善により、糖取り込み能を改善させる=インスリンの効きをよくする作用があります。

 

ツイミーグに関する日本人データ

ツイミーグの薬効と安全性は、2型糖尿病患者を対象に行われた3つの国内第3相試験で確認されています。

この研究はTIMES試験(Trials of IMeglimin for Efficacy and Safety)と名づけられており、TIMES1から3まであります。

駐車場の名前みたいな研究ですね!

…(注射じゃなくて飲み薬!なんて親父ギャクは言えないな)…

試験名 試験内容
TIMES1試験 日本人2型糖尿病患者を対象とした24週間のツイミーグ単剤療法によるプラセボ対照二重盲検比較、無作為化試験
TIMES2試験 日本人2型糖尿病患者を対象とした52週間のツイミーグと既存の血糖降下剤との併用療法およびツイミーグ単剤療法による非盲検、並行群間比較試験
TIMES3試験 日本人2型糖尿病患者を対象としたツイミーグとインスリン製剤との併用療法による16週間のプラセボ対照、無作為化、二重盲検比較試験+その後36週間の非盲検継続投与試験

この中で論文公開されているTIMES1試験のデータをみていきましょう。

本試験は食事・運動療法以外の2型糖尿病治療経験がないまたは他の経口血糖降下薬の単独療法を12週間以上受けている日本人2型糖尿病患者さん213名を対象に、プラセボとツイミーグを24週間投与した国内第Ⅲ相試験です。

主要評価項目は「ベースラインから24週後のHbA1cの変化」で、ツイミーグ投与群はプラセボ群に対して、有意にHbA1cが低下していました。

 

副作用

1~5%未満に認められる副作用として、悪心、下痢、便秘が報告されています。

重大な副作用としては、低血糖(6.7%)が挙げられています。

特に、インスリン製剤、SU薬、速効型インスリン分泌促進薬と併用した場合に、低血糖リスクが上昇しますので注意が必要です。

なお、肝臓での糖新生抑制や骨格筋での糖取込みの改善など類似した作用をもつメトホルミンで見られる乳酸アシドーシスですが、ツイミーグでは承認時までの臨床で認められていません。

ただし、メトホルミンとツイミーグを併用した場合には、通常よりも消化器症状の頻度が上がるようです。

 

剤形


大日本住友製薬HPより

ツイミーグが製造販売承認をとっているのは500mgの1剤形になります。

 

用法・用量

通常、成人にはイメグリミン塩酸塩として1回1000mgを1日2回朝、夕に経口投与します。

 

経口血糖降下薬の中での位置づけは?

現在使われている経口血糖降下薬だけでも8種類ありますが、今回新たに登場したツイミーグは、従来の薬物治療にどう位置付けられるのでしょうか。

ツイミーグは、インスリン抵抗性の改善とインスリン分泌能の改善という2つの作用を持つことから、幅広い病態の2型糖尿病患者さんで効果を発揮できそうです。

上の図は開発元のフランスPoxel社が公開しているTIMES2試験のデータですが、多くの経口血糖降下薬との併用療法における有効性が確認されています。

特に現在国内シェアNo.1のDPP-4阻害薬との相性が良いようですから、併用薬としての活躍の場が期待されます。

まずは2剤目以降に追加する薬剤と位置付けられますが、長期間、単剤でコントロールできる可能性を秘めていることから、今後の研究結果によっては第1選択薬になってくるかもしれません。

薬物療法を開始する初期の2型糖尿病患者さんでは、「インスリン抵抗性の亢進」と「インスリン分泌能の低下」という2つの病態が、それぞれ軽度に存在していることが多いです。

ところが、従来使用されている経口血糖降下薬には2つの病態を同時に改善できる薬剤はなく、薬物療法を単剤から始めても、追加の薬剤が必要となるケースが少なくありません。

ツイミーグには、この両方を治療できる、という点で優れた薬剤なのです。

現時点では、発売日、薬価は未定ですが、実臨床での効果が期待されます。

 

© Inui pediatrics and internal medicine clinic

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