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フルミストとは?鼻にスプレーするインフルエンザワクチン|注射との違い・効果・対象年齢を解説

2026/10/17
鼻にスプレーするインフルエンザワクチン「フルミスト」と従来の注射を示したイラスト

「インフルエンザワクチンを受けたいけれど、注射が苦手」

そのようなお子さんの選択肢となるのが、鼻にスプレーするインフルエンザワクチン「フルミスト」です。日本では2024年秋から接種が始まり、2歳以上19歳未満の方が対象になっています。

フルミストには、注射針を使わず、1シーズン1回で接種が終わるというメリットがあります。一方、従来の注射とはワクチンの仕組みが異なるため、年齢や持病、服用中の薬によっては接種できません。

また、「鼻から入れるワクチンの方がよく効くの?」「生ワクチンは安全?」と心配される方もいるでしょう。

この記事では、フルミストと従来の注射との違い、予防効果、対象年齢、副反応、どちらを選べばよいかを、国内外の研究結果も踏まえてわかりやすく解説します。

先に結論

健康状態に問題がなく、生ワクチンを避ける理由のない2歳から18歳までの方では、フルミストも従来の注射もインフルエンザ予防の選択肢です。現時点では、どちらか一方がすべてのお子さんに明らかに優れているとはいえません。注射への苦手意識、持病、服用中の薬、接種回数などを考えて選びます。

目次(押すと目次が出ます)

フルミストとは?鼻にスプレーするインフルエンザワクチン

フルミストは、鼻の中に噴霧するインフルエンザワクチンです。正式には「経鼻弱毒生インフルエンザワクチン」と呼ばれます。

インフルエンザウイルスは、主に鼻やのどの粘膜から体内へ入ります。フルミストは、病気を起こす力を弱めたウイルスを鼻に噴霧し、ウイルスの入り口となる鼻の粘膜にも免疫反応を起こします。

接種は左右の鼻に0.1mLずつ、合計0.2mLを噴霧して終了です。深く吸い込む必要はなく、通常は短時間で接種できます。

鼻にスプレーするフルミストの接種方法と、鼻の粘膜での免疫反応、左右の鼻に0.1mLずつ噴霧することを示した図解

フルミストと従来の注射は何が違う?

フルミスト従来の注射
接種方法左右の鼻にスプレー腕などに注射
ワクチンの種類弱毒生ワクチン不活化ワクチン
日本での対象年齢2歳以上19歳未満生後6か月以上
接種回数年齢にかかわらず1シーズン1回13歳未満は通常2回、13歳以上は通常1回
接種時の特徴針を刺す痛みがない注射時の痛みがある
接種後に多い症状鼻水、鼻づまり、せき、発熱など注射部位の痛み、赤み、腫れなど
妊娠中・免疫機能が低下している方接種できない接種を検討できる

最も大きな違いは、接種方法とワクチンの種類です。フルミストは、生きたウイルスの病原性を弱めて作った「生ワクチン」です。従来の注射は、感染力をなくしたウイルスの成分を使う「不活化ワクチン」です。

この違いがあるため、フルミストは注射が苦手な方にも受けやすい一方、妊娠中の方や免疫機能が低下している方には使用できません。

フルミストのメリット

注射針を使わない

フルミストは鼻にスプレーするため、針を刺す痛みがありません。注射を見るだけで強く緊張してしまうお子さんにとって、大きなメリットです。

ただし、鼻に液体が入る感覚や刺激を嫌がることはあります。「何も感じない接種」というわけではありません。

1シーズン1回で接種が終わる

日本で承認されているフルミストは、2歳から18歳まで年齢にかかわらず1シーズン1回です。

従来の注射は13歳未満では通常2回接種するため、通院回数を減らせることもフルミストの利点です。

国内臨床試験で、過去のインフルエンザワクチン接種歴にかかわらず、1回の接種で発症予防効果が示されたため、日本では1シーズン1回となっています。

鼻の粘膜にも免疫反応を起こす

フルミストは、血液中の抗体だけでなく、ウイルスの侵入口となる鼻の粘膜にも免疫反応を起こします。

ただし、「鼻の粘膜に免疫ができるから、注射より必ずよく効く」という意味ではありません。実際の予防効果は、流行するウイルスの型、ワクチン株との一致、年齢などによって変わります。

フルミストの効果は?注射よりよく効くの?

結論からいうと、フルミストにはインフルエンザの発症を予防する効果があります。ただし、注射より一貫して優れているとはいえません。

フルミストの研究と評価の変遷。小児で高い効果が示された初期研究から、H1N1への効果低下、現在の評価までを示した年表

かつては「注射よりよく効く」と注目された

1998年に発表された小児の臨床試験では、フルミストと同じタイプの経鼻生ワクチンは、培養検査で確認されたインフルエンザを93%減らしました。

さらに2007年の研究では、6~59か月の小児約8,000人を対象に、経鼻生ワクチンと注射の不活化ワクチンを直接比較しています。経鼻生ワクチンを受けたグループでは、インフルエンザが注射のグループより54.9%少ないという結果でした。

一方、この研究では特に6~11か月の乳児で喘鳴や入院が増えました。現在、フルミストを2歳未満に使用しない背景となった重要なデータです。

効果が低かったシーズンもある

その後、2009年に登場したA(H1N1)pdm09型に対して、米国ではフルミストの効果が十分に確認できないシーズンがありました。米国では2016/17シーズンと2017/18シーズンに、フルミストが一時的に推奨から外れています。

この低下はすべての国で同じようにみられたわけではありませんが、ワクチンに使われたH1N1株の安定性や、鼻の中で増える力などが原因として検討され、その後ワクチン株が変更されました。

2024年に、小児を対象としたフルミストと注射の直接比較試験をまとめた研究が発表されました。全体として両者に明確な差は認められませんでしたが、対象となった研究の多くが以前の三価ワクチンを使ったもので、現在の製剤を比較した新しい研究はまだ多くありません。

したがって、現在の評価は「鼻だから効かない」でも「注射より必ずよく効く」でもなく、どちらにも予防効果があり、明確な優劣は確立していないと考えるのが適切です。

日本で使った場合の効果は?2024/25シーズンの国内データ

2026年8月、製造販売元の第一三共から、フルミスト発売初年度にあたる2024/25シーズンの製造販売後調査の結果が公表されました。

これは、実際の診療で集められたデータを用いた症例対照研究です。接種するワクチンを無作為に割り付けて比較した試験ではないため、結果の解釈には注意が必要です。

この調査では、インフルエンザのような症状で医療機関を受診した2歳以上19歳未満の2,374例を解析しています。そのうちフルミスト接種者は136例で、PCR検査陽性が24例、陰性が112例でした。

未接種者と比べたフルミストの調整後ワクチン有効率は、55.5%(95%信頼区間23.5~74.1%)でした。

これは「接種した100人のうち55人だけに効く」という意味ではありません。未接種の場合と比べて、医療機関を受診し、PCR検査で確認されるインフルエンザの可能性が約56%低かったと推定されたという意味です。

同じ調査で、フルミスト以外のインフルエンザワクチンの有効率は41.2%でした。ただし、55.5%と41.2%は、どちらも未接種者と比べて別々に計算した数字です。フルミストと注射の優劣を直接検証するための研究ではないため、この結果だけで「フルミストの方が注射より優れている」とは判断できません。

6歳未満に限ると、フルミストの有効率は31.6%でしたが、統計学的に明確な効果は確認できませんでした。この年齢のフルミスト接種者は65例、そのうち陽性者は11例と少なく、「効かなかった」とも「十分に効いた」ともまだ判断できない結果です。

国内で実際に使用した初年度のデータとして重要ですが、フルミスト接種者数はまだ限られています。今後も複数シーズンの結果を確認する必要があります。

フルミストの対象年齢と接種できない方

日本でフルミストを接種できる年齢は、2歳以上19歳未満です。つまり、2歳の誕生日から19歳の誕生日を迎える前日までが対象です。

対象年齢内であっても、次の方はフルミストを接種できません。

  • 明らかな発熱がある、または重い急性疾患にかかっている
  • フルミストの成分でアナフィラキシーを起こしたことがある
  • 病気や治療によって免疫機能が明らかに低下している
  • 妊娠している

フルミストは生ワクチンのため、免疫を抑える治療を受けている方や妊娠中の方には使用できません。このような場合でも、従来の注射は接種を検討できます。

妊娠する可能性がある方は、接種前約1か月から接種後約2か月まで妊娠を避ける必要があります。

対象年齢内でも、注射を選びやすい方

次のような場合は、従来の注射が適していることがあります。

  • 喘息がある、または接種時にゼーゼーしている
  • 授乳中である
  • 家族など身近に重い免疫不全の方がいる
  • 鼻づまりが強く、鼻への噴霧が難しい
  • 鼻にスプレーされることへの抵抗が強い

また、けいれんの既往、心臓・腎臓・肝臓・血液などの基礎疾患、ゼラチンや卵・鶏由来成分による強いアレルギーがある方は、接種前に医師へご相談ください。卵アレルギーがあるだけで、一律に接種できないわけではありません。

服用中の薬も確認が必要です。ステロイドや免疫抑制薬、アスピリンなどを使用している方、最近インフルエンザの治療薬を使用した方は、予約時または診察時にお伝えください。

フルミストの副反応

フルミストでは、鼻水や鼻づまりなど、鼻やのどの症状が比較的よくみられます。

日本で3,341例を対象に行われた製造販売後調査では、ワクチンとの因果関係を否定できない主な副反応は次のとおりでした。

主な副反応発生率
鼻水20.32%
鼻づまり9.82%
発熱8.59%
せき8.08%

副反応が報告された方は全体の31.73%でした。多くは鼻やのどの症状、発熱などで、一時的にみられるものです。

ワクチンとの因果関係を否定できない重篤な副反応は3例で、アナフィラキシー反応、血小板数減少、熱性けいれんが各1例報告され、いずれも回復しました。ただし、3,341例の調査だけで、極めてまれな副反応まで否定できるわけではありません。

接種後に息苦しさ、全身のじんましん、顔やのどの腫れ、繰り返すけいれんなどがみられた場合は、速やかに医療機関へご相談ください。

生ワクチンでインフルエンザになるの?

フルミストには、病気を起こす力を弱めたインフルエンザウイルスが使われています。通常のインフルエンザウイルスをそのまま鼻に入れるわけではありません。

接種後に鼻水、せき、発熱などが起こることはあります。また、接種後しばらくは鼻やのどからワクチン由来のウイルスが検出される場合があります。

そのため、接種後1~2週間は、重い免疫不全のある方との密接な接触をできるだけ避ける必要があります。同居家族に該当する方がいる場合は、従来の注射を選ぶことも含めて事前にご相談ください。

なお、フルミストを接種したお子さんが、妊娠中のご家族との接触を避ける必要はありません。接触に注意が必要なのは、重い免疫不全のある方です。

接種後少なくとも1週間程度は、ワクチン由来のウイルスによってインフルエンザの迅速検査が陽性になる可能性があります。発熱などで医療機関を受診する際は、フルミストを接種した日をお伝えください。

フルミストと注射、どちらを選べばいい?

健康状態に問題がなく、生ワクチンを避ける理由のない2歳から18歳までの方では、注射が苦手ならフルミスト、鼻への噴霧が苦手なら従来の注射という選び方ができます。

年齢、生ワクチンを避ける理由、注射への恐怖などから、フルミストと注射のどちらを検討するか示した選び方ガイド
フルミストを選びやすい方注射を選びやすい方
注射への恐怖が強い鼻へのスプレーが苦手
13歳未満で接種を1回で済ませたい2歳未満または19歳以上
鼻への噴霧を受け入れられる喘息や強い鼻づまりがある
生ワクチンを避ける理由がない妊娠中、授乳中、免疫機能が低下している

大切なのは、「どちらが強いワクチンか」だけで決めることではありません。年齢、注射への苦手意識、持病、服用中の薬、家族の健康状態などに合う方法を選びます。

どちらのワクチンもインフルエンザを100%防ぐものではありませんが、発症や重症化の可能性を減らすための大切な手段です。

フルミストについてよくある質問

接種するときに泣いたり、うまく吸えなかったりしても大丈夫ですか?

フルミストは鼻から深く吸い込む必要はありません。ただし、安全に噴霧するためには、短時間でも顔を大きく動かさずに接種できることが必要です。接種が難しい場合は、従来の注射をご案内することがあります。

接種後にくしゃみをしたり、鼻をかんだりしても大丈夫ですか?

接種後にくしゃみや鼻水が出たり、鼻をかんだりしても、通常は再接種の必要はありません。鼻から深く吸い込む必要もありません。

薬液を飲み込んだ場合も、インフルエンザウイルスは胃酸によって働きを失うと考えられています。

接種後、いつから効果が期待できますか?

フルミストは、一般に接種から約2週間で効果が期待できるとされています。流行が始まる前に、余裕をもって接種しましょう。

厳密には、効果が現れる時期を直接検証した試験はありませんが、国内臨床試験では接種後14日以内の発症を有効性の評価から除外しています。

風邪や鼻水があっても接種できますか?

軽い鼻水だけで必ず接種できないわけではありません。ただし、発熱がある場合、鼻づまりが強い場合、ゼーゼーしている場合などは、延期や注射への変更を検討します。当日の診察で判断します。

ほかのワクチンと同じ日に接種できますか?

医師が必要と判断した場合は、ほかのワクチンと同時に接種できます。接種予定のワクチンがある方は、予約時にお知らせください。

接種後に学校や保育園へ行けますか?

体調に問題がなければ、フルミストを接種したことだけを理由に学校や保育園を休む必要はありません。接種当日は激しい運動を避け、体調の変化に注意してください。

フルミストを接種すればインフルエンザにかかりませんか?

接種してもインフルエンザにかかることはあります。ワクチンの効果は、流行するウイルスの型やワクチン株との一致などによって毎年変わります。手洗い、換気、十分な休養などの基本的な感染対策も大切です。

当院のインフルエンザワクチン接種について

乾小児科内科医院では、2026年秋もフルミストと従来の注射の両方を取り扱います。

ワクチン接種開始料金(税込)
フルミスト9月25日開始予定8,580円/1回
従来の注射9月15日開始1回目4,400円、2回目3,850円

フルミストの開始日は、入荷状況により変更となる場合があります。予約方法や最新の接種日程は、当院のお知らせをご確認ください。当院の公式LINEからもご予約いただけます。

インフルエンザワクチンの予約方法を見る

フルミストと注射のどちらがよいか迷う場合は、年齢、持病、服用中の薬などを確認したうえでご案内します。お気軽にご相談ください。

参考文献


この記事の監修者

乾小児科内科医院 副院長 乾 宏行(アレルギー専門医) の写真

乾 宏行(いぬい ひろゆき) 乾小児科内科医院 副院長

【保有資格】

  • 日本小児科学会認定 小児科専門医
  • 日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

副院長よりメッセージ: フルミストと従来の注射、どちらにもメリットと注意点があります。お子さんの年齢や体質、ご家族の状況に合わせてご案内しますので、迷ったときはお気軽にご相談ください。


【インフルエンザワクチン接種のご案内】 

フルミスト・従来の注射のどちらにするか迷う方も、当院までお気軽にご相談ください。年齢や持病、ご希望を伺ったうえでご案内します。健診・予防接種の詳しい案内はこちら。

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