食後に血糖値があがりやすいもの・あがりにくいもの
「血糖値が上がりやすい食べ物は何ですか?」
糖尿病の診療をしていると、とてもよく聞かれる質問です。
食後の血糖値に最も大きく影響するのは、ごはん・パン・麺・砂糖などに含まれる糖質です。
ただし、
糖質を食べれば、どの食品でも同じように血糖値が上がるわけではありません。
同じくらいの糖質を含んでいても、
- 食品の種類
- 食物繊維の量
- 加工方法や調理方法
- 食べる量
- 一緒に食べる食品
- 食べる順番
などによって、食後血糖の上がり方は変わります。
今回は、血糖値が上がりやすい食べ物・上がりにくい食べ物の考え方と、GI、食べる順番などについて、糖尿病専門医の立場から分かりやすく解説します。
食後の血糖値はなぜ上がる?
ごはんやパン、麺などに含まれる糖質は、消化されて主にブドウ糖となり、小腸から吸収されて血液の中に入ります。
そのため、食事をすると血糖値が上昇します。

血糖値が上がると、すい臓からインスリンというホルモンが分泌されます。
インスリンには、血液中のブドウ糖を筋肉や肝臓などの細胞へ取り込ませ、血糖値を下げる働きがあります。
健康な方では、食後に血糖値が上がっても、インスリンの働きによって徐々に元の状態へ戻っていきます。
一方、糖尿病や糖尿病予備群では、
- インスリンの分泌量が少ない
- インスリンが出るタイミングが遅い
- インスリンが効きにくい
などの理由によって、食後の血糖値が高くなったり、血糖値が下がるまでに時間がかかったりします。
糖尿病では「食後血糖」が高くなりやすい
糖尿病というと、健康診断で測定する空腹時血糖やHbA1cを思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、糖尿病の比較的早い段階では、
空腹時血糖はそれほど高くないのに、食事のあとだけ血糖値が大きく上がる
ことがあります。
これが食後高血糖です。
HbA1cは過去1〜2か月を中心とした平均的な血糖状態を反映する検査なので、食後だけ一時的に血糖値が高くなる場合には、その変化が十分に見えてこないこともあります。
糖尿病の血糖管理では、HbA1cだけを見るのではなく、必要に応じて食後にどのように血糖値が動いているかを考えることも大切です。

血糖値を最も上げやすい栄養素は「糖質」
食後の血糖値に最も直接的に影響する栄養素は糖質です。
糖質を多く含む代表的な食品には、
- ごはん
- パン
- 麺類
- もち
- シリアル
- いも類
- お菓子
- ジュースや清涼飲料水
- 果物
などがあります。ただし、果物は食物繊維なども含み、種類や量によって血糖への影響は異なります。
一方、肉・魚・卵などに多く含まれるたんぱく質や、油・バターなどの脂質は、糖質ほど食後すぐに血糖値を上昇させません。
ただし、
「血糖値が上がりにくいから、肉や脂質はいくら食べてもよい」
という意味ではありません。
糖尿病の食事療法では、血糖値だけでなく、
- 体重
- 血圧
- LDLコレステロール
- 中性脂肪
- 腎機能
なども含めて、食事全体を考える必要があります。
特定の栄養素だけを見るのではなく、野菜、豆類、魚、全粒穀物なども取り入れながら、食事全体の質を整えることが大切です。
同じ糖質でも血糖値の上がり方は違う
例えば、ごはんとパスタにはどちらも糖質が含まれています。
しかし、同じ量の糖質を食べたとしても、食後血糖の上がり方がまったく同じとは限りません。
この違いを比較する指標のひとつが、GI(グリセミックインデックス)です。
GIとは?
GI(Glycemic Index:グリセミックインデックス)は、
糖質を含む食品を食べたあと、血糖値がどのくらい上がりやすいか
を表す指標です。
一般的には、
- 低GI:55以下
- 中GI:56〜69
- 高GI:70以上
に分類されます。
GIが高い食品では血糖値が比較的速く上昇し、GIが低い食品では比較的ゆるやかに上昇する傾向があります。
一般的には、次のような傾向があります。

ただし、これはあくまで大まかな傾向です。
「白米は高GI、玄米は低GI」と単純には決められない
以前は、
「白米は高GI」
「玄米なら低GI」
「この食品のGIは○○」
というように、食品ごとに数字を覚える方法がよく紹介されていました。
しかし実際には、GIは食品名だけでは決まりません。
例えば米であれば、
- 品種
- 精製方法
- 炊き方
- 加工方法
などによってGIが変わります。
パンやシリアルなども同じです。
そのため、食品を単純に
「高GIだから悪い」
「低GIだから安心」
と分けるのではなく、食べる量や食事全体の組み合わせまで含めて考えることが大切です。
GIよりもまず「糖質の量」が大切
GIは便利な指標ですが、血糖値を考えるうえでGIだけを見ればよいわけではありません。
例えば、低GIの食品でも大量に食べれば、摂取する糖質の総量は多くなります。
反対に、高GIの食品でも食べる量が少なければ、血糖値への影響は比較的小さくなります。
つまり実際の食事では、
①どれくらい糖質を食べるか
②その食品がどのくらい血糖値を上げやすいか
の両方を考える必要があります。
GIに「実際に食べる糖質量」まで組み合わせた考え方を、GL(グリセミックロード)と呼びます。
ただ、日常生活で毎回GIやGLを計算する必要はありません。
まずは、
「糖質を一度に食べすぎない」
ことを意識する方が実践しやすいでしょう。
血糖値を上げにくくする3つのポイント
細かいGIの数字をすべて覚える必要はありません。
普段の食事では、まず次の3つを意識してみてください。

1.糖質を一度に食べすぎない
最も基本になるのは、やはり糖質の量です。
例えば、
- ごはんを大盛りにする
- ラーメンとチャーハンを一緒に食べる
- パスタとパンを一緒に食べる
- 丼物に甘い飲み物を合わせる
- 食後にさらにお菓子やジュースをとる
といった食べ方では、糖質量が多くなりやすく、食後血糖も上がりやすくなります。
「糖質をゼロにする」のではなく、
主食や甘いものを必要以上に重ねない
ことから始めてみるとよいでしょう。
2.野菜や豆類など、食物繊維の多い食品を取り入れる
野菜、きのこ、海藻、豆類などには食物繊維が多く含まれています。
食物繊維を含む食品を一緒にとることで、糖質の消化や吸収がゆるやかになり、食後血糖の急激な上昇を抑える助けになります。
そのため、
「ごはんだけ」
「パンだけ」
「麺だけ」
という食事よりも、
野菜や肉・魚などのおかずを組み合わせた食事
の方がおすすめです。
栄養バランスの面でも優れています。
3.ごはんやパンを最初に一気に食べない
食べる順番も、食後血糖を抑えるためのひとつの工夫です。
例えば定食なら、
野菜・きのこ・海藻など
↓
肉・魚・卵などのおかず
↓
ごはん・パン・麺
という順番を意識します。
いわゆる「ベジファースト」と呼ばれる方法です。
ただし、
「必ず野菜を最初に食べなければいけない」
と神経質になる必要はありません。
大切なのは、
ごはんやパンなどの糖質を最初に一気に食べないこと
です。

なぜ食べる順番で血糖値が変わるの?
野菜や肉・魚などのおかずを先に食べると、食物繊維やたんぱく質、脂質の影響によって、胃から腸への食べ物の移動や糖質の吸収がゆるやかになります。
また、食事によって分泌される消化管ホルモンなども関係し、食後の血糖上昇が緩やかになると考えられています。
難しく考える必要はありません。
「炭水化物だけを先に食べない」
と覚えておけば十分です。
具体的にはこんな食べ方がおすすめです
例えば焼き魚定食なら、
おひたし・サラダ
↓
味噌汁・焼き魚
↓
ごはん
という流れです。
カレーライスや丼物のように主食とおかずが一緒になっている場合も、最初にサラダや副菜を少し食べてから主食に進むだけでも構いません。
毎食きっちり順番を守る必要はありません。
おかずとごはんを一緒に食べたい方も多いでしょう。
その場合も、
最初からごはんだけを勢いよく食べない
くらいの感覚で十分です。
無理なく続けられることの方が大切です。
「血糖値を上げないために炭水化物を食べない」はおすすめしません
糖質が血糖値を上げると聞くと、
「それなら、ごはんやパンを食べなければいいのでは?」
と思う方もいるかもしれません。
確かに、糖質の摂取量を適切に減らすことで血糖コントロールが改善することはあります。
しかし、すべての方が糖質を極端に制限する必要があるわけではありません。
糖尿病の食事療法にはさまざまな方法があり、すべての人に共通する理想的な糖質・脂質・たんぱく質の割合が決まっているわけではありません。当院で行っているロカボ(ゆるやかな糖質制限)もそのひとつの選択肢です。
年齢、体格、運動量、腎機能、生活スタイルなどによって、適切な食事内容は異なります。
極端な方法を短期間だけ行うよりも、
無理なく続けられる食事を考える
ことの方が大切です。
糖尿病の薬を使用している方へ
インスリンや、低血糖を起こす可能性のある糖尿病治療薬を使用している方が、自己判断で急に食事量や糖質量を減らすと、低血糖を起こすことがあります。
特に、
- インスリンを使用している方
- スルホニル尿素薬などを使用している方
- これまでより大幅に食事量を減らそうとしている方
は注意が必要です。
治療中の方は、極端な食事制限を始める前に主治医や管理栄養士へ相談してください。
+α:食後に少し体を動かす
食事だけでなく、食後に少し体を動かすことも食後血糖対策になります。運動療法について詳しくはこちらもご覧ください。
食後に、
- 軽く散歩する
- 家の中を歩く
- 食器を片付ける
- 掃除をする
など、軽い身体活動を行うと、筋肉でブドウ糖が利用されやすくなります。
必ずしも激しい運動をする必要はありません。
まずは、
「食べたあと、ずっと座りっぱなしにしない」
ことから始めてみるのもよいでしょう。
「血糖値が上がりにくい食品」だけを探さなくても大丈夫
食後血糖は、ひとつの食品だけで決まるわけではありません。
大切なのは、糖質の量、食物繊維、おかずとの組み合わせ、食べる順番、食後の活動など、食事や生活全体で考えることです。
高GI食品を絶対に避ける必要もありません。好きなものをすべて禁止するのではなく、量や組み合わせを工夫しながら、長く続けられる方法を見つけることが大切です。
まとめ
食後血糖を上げにくくするポイントは、次の5つです。
- 糖質は「種類」だけでなく「量」も大切
- GIは参考になりますが、GIだけで食品の良し悪しは決まりません
- 野菜・豆類・きのこ・海藻など、食物繊維の多い食品を取り入れる
- ごはん・パン・麺などの主食を最初に一気に食べない
- 食後に少し体を動かすことも効果的
毎回の食事を完璧にする必要はありません。
まずは、
「主食の大盛りをやめる」
「野菜やおかずと一緒に食べる」
「主食だけを先に食べない」
「食後に少し歩く」
といった、できそうなところから始めてみましょう。
健康診断で血糖値やHbA1cの異常を指摘された方や、食後血糖が気になる方は、自己流で極端な食事制限を行うのではなく、一度医療機関でご相談ください。
参考文献
- American Diabetes Association Professional Practice Committee. Standards of Care in Diabetes—2026. Diabetes Care. 2026;49(Supplement_1).
- Atkinson FS, Brand-Miller JC, Foster-Powell K, et al. International Tables of Glycemic Index and Glycemic Load Values 2021: A Systematic Review. Am J Clin Nutr. 2021;114:1625-1632.
- 日本糖尿病学会. 「糖尿病診療ガイドライン2024」(2024年5月発行)
この記事の執筆・監修者

乾 恵輔(いぬい けいすけ) 乾小児科内科医院 院長
【保有資格】
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
- 日本循環器学会認定 循環器専門医
- 日本内科学会認定 総合内科専門医
院長よりメッセージ: 食後血糖が気になる方は多いですが、特定の食品を避けることよりも、食べる量・組み合わせ・順番を少し工夫することの方が長く続けられます。無理のない範囲から一緒に見直していきましょう。
【糖尿病・生活習慣病外来のご案内】
健診で血糖値やHbA1cの異常を指摘された方、食後血糖が気になる方へ。当院では、無理のない食事の工夫から治療まで、一人ひとりに合わせたご提案をしています。
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