【糖尿病専門医が解説】糖尿病の運動療法|歩数・時間・筋力トレーニング・食後運動の目安
糖尿病の治療には、薬だけでなく、食事療法と運動療法があります。
ただ、
「運動した方がいいのは分かっているけれど、なかなか続かない」
「どんな運動を、どれくらいやればいいの?」
という方も多いと思います。
運動療法で大切なのは、最初から完璧を目指すことではありません。
まずは今より少し体を動かすこと。
そこから始めてみましょう。
目次(タップすると開きます)
まず覚えてほしい4つのポイント

糖尿病の運動療法は、まずこの4つを意識してみましょう。
- 今より少し多く歩く
- 筋トレを週2〜3回
- 長時間座りっぱなしにしない
- 食後に10〜15分歩く
それぞれ、もう少し詳しく見ていきます。
運動…していますか?
人間は昔と比べると、かなり歩かなくなっています。
ある研究では、旧石器時代の人々の歩行量は、1日あたり男性13,200〜21,120歩、女性10,560歩程度だったと推定されています。
もちろん、現代人が旧石器時代の人たちと同じくらい歩かなければならない、という話ではありません。
ただ、車や電車、エレベーター、インターネット通販などが普及し、日常生活の中で自然に体を動かす機会が減っているのは確かです。
現代では、昔より少し意識して体を動かすことが大切になっています。
自分に合った運動量から始めましょう
運動療法は、「これだけやれば全員に正解」というものではありません。
年齢や体力、普段どのくらい体を動かしているか、糖尿病の合併症やほかの持病などによって、ちょうどよい運動量は変わります。
特に、これまでほとんど運動していなかった方が、急にたくさん運動する必要はありません。
まずは無理なく続けられる量から始め、少しずつ増やしていくことが大切です。
そのうえで、一般的な運動量の目安を見てみましょう。
結局、どれくらい運動すればいい?
2型糖尿病では、ウォーキングなどの有酸素運動を週150分程度行うことが、ひとつの目標とされています。
たとえば、
30分 × 週5日
くらいです。
とはいえいきなり週に5回も運動するのはなかなか大変です。
最初からそこまでできなくても問題ありません。
これまであまり運動していなかった方は、
まずは週に1回でも10〜15分ぐらい歩く
あたりから始めてみましょう。
歩数では、1日8,000歩程度がひとつの目安です。
ただし、これも全員が必ず達成しなければならない数字ではありません。
今あまり歩いていない方なら、まずは今より1,000〜2,000歩増やすくらいからで十分です。
少ない運動量でも、血糖改善の効果は期待できます。

なぜ糖尿病に運動がよいの?
運動すると、筋肉はエネルギー源としてブドウ糖を使います。
そのため、血液中のブドウ糖が筋肉に取り込まれ、血糖値が下がりやすくなります。
さらに運動を続けることで、インスリンが効きやすい体になることも期待できます。
運動には血糖値だけでなく、
- 体重管理
- 血圧の改善
- 中性脂肪の改善
- 筋力や体力の維持
- 心臓や血管の病気の予防
など、さまざまなメリットがあります。
糖尿病の運動療法は、単に「カロリーを消費するため」のものではありません。
体全体の代謝を整える治療のひとつです。

まずはウォーキングから
糖尿病の運動療法で、最も始めやすいのがウォーキングです。
特別な道具が必要なく、自分の体力に合わせて運動量を調節できます。
また、30分続けて歩かなければ意味がないわけではありません。
朝10分、昼10分、夕方10分のように分けても構いません。
日常生活の中で、
- 少し遠い駐車場に車を停める
- エレベーターではなく階段を使う
- 昼休みに少し歩く
といった工夫でも、身体活動を増やすことができます。

筋トレも週2〜3回
ウォーキングに加えて、筋トレもおすすめです。
筋肉はブドウ糖を多く使うため、筋力や筋肉量を保つことは血糖管理にも役立ちます。
ジムに通わなくても、
- スクワット
- 椅子から立ったり座ったりする運動
- かかとの上げ下げ
など、自宅でできる運動でも十分です。
目安は週2〜3回程度です。
ウォーキングなどの有酸素運動と筋トレを組み合わせると、より高い血糖改善効果が期待できます。
長時間座りっぱなしにしない
最近の運動療法では、運動する時間だけでなく、座っている時間を長くしすぎないことも大切と考えられています。
仕事やテレビ、パソコンなどで長時間座り続ける方は少なくありません。
ひとつの目安として、
30分くらい座ったら、一度立つ。
これを意識してみてください。
飲み物を取りに行く、電話中は立つ、室内を少し歩く、といった程度でも構いません。
まとまった運動時間が取れない方でも、座りっぱなしを減らすことはできます。
食後に10〜15分歩くのもおすすめ
糖尿病の患者さんに特に取り入れやすいのが、食後に少し体を動かすことです。
食事をすると血糖値が上がります。詳しくは食後に血糖値があがりやすいもの・あがりにくいものもご覧ください。
そのタイミングで歩いたり体を動かしたりすると、筋肉がブドウ糖を使うため、食後血糖の上昇を抑える効果が期待できます。
迷ったら、
夕食後に10〜15分歩く
ところから始めてみるのもおすすめです。
外を歩かなくても、食後の片付けや家事などで体を動かすのでも構いません。
運動の強さはどれくらい?
運動を始めたばかりの方は、
「楽〜やや楽」
と感じるくらいから始めてください。
慣れてきたら、
少し息が弾むけれど、会話はできる程度
まで運動量を上げてもよいでしょう。
一方で、
- 胸が痛い
- 強い息苦しさがある
- めまいがする
- 強い動悸がある
といった場合には、無理をせず運動を中止してください。
体力や年齢に合わせて、無理なく続けられる運動を選ぶことが大切です。

運動を始める前に主治医へ相談した方がよい人
糖尿病だからといって、すべての方に運動前の特別な検査が必要なわけではありません。
軽いウォーキングなどであれば、そのまま始められる方も多くいます。
ただし、次のような方は、強い運動を始める前に主治医へ相談してください。
- 糖尿病による進行した眼の合併症がある
- 足の感覚が鈍い、足に傷や潰瘍がある
- 心臓病がある
- 腎機能がかなり低下している
- 血糖値が非常に高い、または体調が悪い
また、普段ほとんど運動していない方が急に強い運動を始める場合にも注意が必要です。
持病や合併症があるからといって、必ずしも運動ができないわけではありません。
その方の状態に合った運動を選ぶことが大切です。

低血糖には注意しましょう
インスリン注射やSU薬など、低血糖を起こす可能性のある薬を使っている方は、運動中や運動後の低血糖に注意が必要です。詳しくは低血糖の症状・原因・検査・対処法もご覧ください。
冷や汗、手の震え、動悸、強い空腹感、ぼーっとするなどの症状が出た場合には、低血糖の可能性があります。
低血糖を起こす可能性のある薬を使用している方は、ブドウ糖を携帯しておくと安心です。
長時間の運動や激しい運動では、補食やインスリン量の調整が必要になることもあります。
薬の量を自己判断で変えず、主治医と相談してください。
まとめ
糖尿病の運動療法で大切なのは、特別な運動をすることではありません。
- 今より少し多く歩く
- 筋トレを週2〜3回取り入れる
- 長時間座りっぱなしにしない
- 食後に少し体を動かす
まずは、この中からできそうなことをひとつ選んでみてください。
糖尿病の合併症や心臓病などがある方、低血糖を起こす薬を使っている方は、主治医と相談しながら安全に運動を行いましょう。
運動療法で大切なのは、完璧にやることではなく、続けることです。
まずは今日から、無理のない範囲で始めてみましょう。
この記事の執筆・監修者

乾 恵輔(いぬい けいすけ) 乾小児科内科医院 院長
【保有資格】
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
- 日本循環器学会認定 循環器専門医
- 日本内科学会認定 総合内科専門医
院長よりメッセージ: 運動療法は、頑張りすぎるとかえって続きません。今日から少し歩数を増やす、食後に少し歩いてみる、といった小さな一歩で十分です。無理なく続けられる方法を一緒に見つけていきましょう。
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