健康診断で「心臓が大きい」と言われたら|心肥大・心拡大の原因と必要な検査
健康診断の胸部レントゲンで、
「心臓が大きいと言われた」
「心拡大を指摘された」
「心肥大の疑いと書いてあった」
という経験はありませんか?
「心臓が大きい」と聞くと心配になりますが、健診で一度指摘されただけで、必ず心臓病があるとは限りません。
一方で、高血圧や心臓弁膜症、心筋症などが背景に隠れていることもあります。大切なのは、心臓が大きく見える理由を確認することです。
繰り返し指摘されている場合や、高血圧、息切れ、むくみなどがある場合は、循環器内科で心エコー検査を受けることをおすすめします。
この記事では、混同されやすい心肥大と心拡大の違い、主な原因、必要となる検査について解説します。
目次(押すと目次が出ます)
心肥大と心拡大は同じものではありません
「心肥大」と「心拡大」は似た言葉ですが、意味は異なります。
心肥大は、心臓の筋肉の量が増え、主に心室の壁が厚くなった状態です。
一方、心拡大は、心臓の部屋が広がるなどして、心臓全体が大きくなった状態です。
健康診断で「心臓が大きい」と指摘される場合、その多くは胸部レントゲンで心臓の影が基準より大きく見えたことを意味します。したがって、健診で指摘されるのは厳密には心肥大ではなく、「心拡大」や「心陰影拡大」です。
心筋の壁が厚くなっていても、心臓全体の大きさが変わらないことはあります。そのため、胸部レントゲンだけで心肥大の有無を判断することはできません。
反対に、心臓の部屋が広がり、筋肉にも肥大がみられるなど、心拡大と心肥大が同時に存在する場合もあります。

健診では「心胸郭比(CTR)」を見ています
胸部レントゲンでは、胸の横幅に対して心臓の横幅がどの程度あるかを「心胸郭比(CTR)」という数値で評価します。
一般に、立位・正面から撮影した胸部レントゲンで、心胸郭比が50%以上の場合に「心陰影拡大」と判断されます。

ただし、心胸郭比は心臓そのものの大きさを直接測っているわけではありません。息を十分に吸えていない、仰向けでの撮影、体が傾いている、撮影方向が異なるといった条件によって、心臓の影が実際より大きく見えることがあります。体格の影響を受けることもあります。
また、心臓を包む心膜に液体がたまる「心膜液貯留」があると、心臓そのものが大きくなっていなくても、胸部レントゲンでは心陰影が大きく見えることがあります。
このため、心胸郭比が50%以上であることだけで、心臓病の有無や重症度を判断することはできません。
以前のレントゲンと比べて大きくなっているか、心電図や血圧に異常がないか、息切れやむくみなどの症状がないかをあわせて確認することが大切です。
胸部レントゲンで分かるのは、心臓の影が大きく見えることまでです。心筋が厚いのか、心腔が広がっているのか、心膜液があるのかは、心エコー検査で確認します。
心肥大や心拡大はなぜ起こる?
心臓は、心筋が収縮することで全身へ血液を送り出しています。
心臓に負担がかかったときの変化は一つではありません。強い圧力に逆らって血液を送り出す状態では心筋の壁が厚くなりやすく、通常より多くの血液を送り出す状態では心臓の部屋が広がりやすくなります。
高血圧・大動脈弁狭窄症
心肥大の原因として特に身近なのが高血圧です。
血圧が高い状態では、心臓は強い圧力に逆らって血液を送り出し続けなければなりません。この状態が長期間続くと、特に左心室の筋肉が厚くなる「左室肥大」を起こすことがあります。
心臓の出口にある大動脈弁が狭くなる「大動脈弁狭窄症」でも、同じように左心室へ強い圧力がかかり、心肥大が起こります。
高血圧などによる病的な心肥大が進むと、心筋が硬くなり、血液を十分に取り込みにくくなることがあります。さらに負担が続くと、心臓の働きが低下したり、不整脈や心不全につながったりすることがあります。
心臓弁膜症
弁膜症では、心肥大だけでなく心臓の部屋が広がることもあります。
例えば僧帽弁閉鎖不全症では、左心室から送り出した血液の一部が左心房へ逆流します。心臓は、もともと送り出す予定だった血液に加えて、戻ってきた血液も再び送り出さなければなりません。
このような状態が長く続くと、左心房や左心室に負担がかかり、心臓の部屋が次第に広がることがあります。大動脈弁閉鎖不全症など、ほかの弁膜症でも心拡大がみられます。
心筋症・心筋梗塞などによる心筋障害
拡張型心筋症など、心臓の筋肉そのものに異常が起こる病気では、血液を送り出す力が低下し、左心室が拡大することがあります。
心筋梗塞などによって心筋が傷ついた場合も、残った心筋に負担がかかり、時間とともに心臓が大きくなることがあります。こうした状態が進むと心不全につながることもあります。詳しくは心不全は繰り返す 上手な付き合い方のポイントは?でも解説しています。
また、速い脈が長期間続く頻脈性不整脈によって心臓の働きが低下し、心拡大を起こす場合もあります。
先天性心疾患
心房中隔欠損症など、生まれつきの心臓病が成人健診をきっかけに見つかることもあります。
なお、心拡大は心不全に伴ってみられることがありますが、心拡大があるだけで心不全と診断されるわけではありません。反対に、心臓が大きくなくても心不全を起こしていることがあります。
心肥大や心拡大はどうやって調べる?
心肥大や心拡大の原因を調べるうえで、中心となるのが心エコー(心臓超音波)検査です。
心エコーでは、心臓の筋肉の厚さ、心房や心室の大きさ、血液を送り出す力、弁の狭窄や逆流、心膜液の有無などをリアルタイムで確認できます。痛みや放射線被ばくはなく、体への負担が少ない検査です。
ただし、心電図だけで実際の心筋の厚さや心臓の大きさを確定することはできません。そのほか、診察や血圧測定に加えて、必要に応じて血液検査などを行います。それぞれの検査で主に分かることを整理すると、次のようになります。
| 検査 | 主に分かること |
|---|---|
| 心エコー | 心筋の厚さ、心腔の大きさ、弁膜症、心機能、心膜液 |
| 心電図 | 心肥大を疑う変化、不整脈、心筋梗塞の痕跡 |
| ホルター心電図 | 一時的に起こる不整脈 |
| 心臓MRI・CT | 心筋や心臓の構造をより詳しく評価 |
「心臓が大きい」と言われたら受診したほうがいい?
次のような場合には、一度循環器内科で詳しく調べることをおすすめします。

- 毎年のように心拡大を指摘される、または以前より大きくなっている
- 高血圧や心臓病がある
- 心電図にも異常を指摘されている
- 動悸や脈の乱れがある
- 階段や坂道での息切れ、足のむくみ、胸痛などがある
なかでも、強い息苦しさ、横になると苦しい、急にむくみが増えた、強い胸痛や胸部圧迫感があるといった場合には、早めの医療機関受診が必要です。
健診結果を持参すると、心胸郭比の数値やほかの検査結果をあわせて確認できます。過去にも同じ指摘を受けている場合は、以前の結果もお持ちください。
まとめ
健康診断の胸部レントゲンで指摘される「心臓が大きい」は、多くの場合、心臓の影が大きく見える「心拡大」や「心陰影拡大」を意味します。
一方、心肥大は心臓の筋肉の量が増え、主に心室の壁が厚くなった状態です。心筋が厚くなっていても心臓全体が大きくならないことがあるため、胸部レントゲンだけでは心肥大の有無を判断できません。
心肥大や心拡大の背景には、高血圧、心臓弁膜症、心筋症、先天性心疾患などが隠れていることがあります。原因を確認するために特に有用なのが心エコー検査です。
健診で「心臓が大きい」「心拡大」「心肥大の疑い」などを指摘された場合には、結果をそのままにせず、一度循環器内科で確認しておきましょう。
参考資料
- 日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」
- 日本循環器学会・日本心不全学会「2025年改訂版 心不全診療ガイドライン」
- Ohte N, et al. JCS 2021 Guideline on the Clinical Application of Echocardiography. Circ J. 2022;86:2045-2119.
- Izumi C, et al. JCS/JSCS/JATS/JSVS 2020 Guidelines on the Management of Valvular Heart Disease. Circ J. 2020;84:2037-2119.
- 日本循環器学会・日本心不全学会「心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)」
- Simkus P, et al. Limitations of cardiothoracic ratio derived from chest radiographs to predict real heart size: comparison with magnetic resonance imaging. Insights Imaging. 2021;12:158.
この記事の執筆・監修者

乾 恵輔(いぬい けいすけ) 乾小児科内科医院 院長
【保有資格】
- 日本循環器学会認定 循環器専門医
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
- 日本内科学会認定 総合内科専門医
院長よりメッセージ: 健診で「心臓が大きい」と言われても、それだけで心臓病と決まるわけではありません。気になる結果がある方は、健診結果をお持ちのうえお気軽にご相談ください。
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