Apple Watchで心房細動は見つかる?心電図と不規則な心拍の通知を循環器専門医が解説
Apple Watchに「不規則な心拍」の通知が届いても、それだけで心房細動とは決まりません。通知の日時を確認し、動悸が続いていれば心電図アプリで記録して、診察時に見せてください。記録できなかった場合も、通知について相談できます。
Apple Watchは、動悸があるときの心電図を残したり、気づかなかった脈の乱れを知ったりするきっかけになります。心電図アプリと通知機能の違い、研究でわかったこと、受診時に記録を役立てる方法を解説します。
2018年にApple Watch Series 4の心電図機能が発表されたとき、循環器医として驚いたことを覚えています。日本でも2021年に使えるようになり、心電図を診察室の外で記録する機会が広がりました。現在は機能も増えています。まずは、それぞれ何ができるのかを整理しましょう。
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心電図アプリと通知機能はどう違う?

心電図アプリ:自分で30秒間記録する
心電図アプリを開き、時計を着けていない方の指をDigital Crown(時計の側面にあるダイヤル)に添えると、約30秒間の心電図を記録できます。時計の裏側とDigital Crownの電極で、心臓の電気信号を測る仕組みです。記録はiPhoneのヘルスケアアプリからPDFとして保存できます。
診察室で行う12誘導心電図とは異なり、Apple Watchで得られるのは1方向から見た心電図です。それでも、動悸や脈の乱れを感じた「そのとき」の波形を残せることには意味があります。記録するときは腕を机や膝の上に置き、体を動かさずに指を添えてください。
心電図アプリに対応するのはApple Watch Series 4以降とUltraの各モデルで、SEは対応していません。また、この機能は22歳未満の方の使用を想定していません。購入時や利用時には、お使いの機種と設定をAppleの案内で確認してください。[1][2]
不規則な心拍の通知:脈の乱れを時折チェックする
こちらは、指を添えて心電図を取る機能とは別です。Apple Watchが手首の血流の変化から脈の間隔を時折調べ、心房細動を疑う不規則なリズムが繰り返し認められると通知します。測っているのは脈の変化であり、通知の時点で心電図が自動的に記録されているわけではありません。

通知は心房細動の診断ではありません。また、常に監視しているわけでもないため、通知が届かなくても心房細動がないとは言い切れません。この通知機能は、心房細動と診断されたことのある方や22歳未満の方の使用を想定していません。[1][3]
なお、すでに心房細動と診断された方には、兆候が見られた時間の割合を週ごとに推定する「心房細動履歴」という別の機能もあります。あくまで経過を考える参考であり、薬の変更などを判断するものではありません。[1][4]
心房細動とは?なぜ気づくことが大切?
心房細動は、心臓の拍動をつくる電気信号が乱れ、脈が不規則になる不整脈です。動悸や息切れを感じる方もいれば、自覚症状がほとんどない方もいます。年齢とともに起こりやすくなり、脳梗塞や心不全に関わることがあるため、見つかった場合には医師が治療の必要性を判断します。
ただし、手首で脈が不規則だとわかっただけでは、心房細動かどうかは確定できません。期外収縮など、別の原因でも脈は乱れます。診断には心電図の波形を医師が確認することが必要です。受診時の心電図で捉えられない場合は、症状の出方に合わせて長時間記録できる心電図検査などを検討します。[1]
Apple Heart Studyからわかったこと
Apple Watchの不規則な心拍の通知を調べた代表的な研究が、2019年に発表されたApple Heart Studyです。約42万人を対象に、通知を受けた方と、その後の心電図検査の結果を検討しました。これは主に脈を利用した通知機能の研究であり、指を添えて使う心電図アプリの精度を測った研究ではありません。[5]
研究期間中、通知を受けたのは41万9,297人中2,161人(0.52%)でした。通知を受け、後日送られた心電図パッチを返送した450人のうち、34%で心房細動が記録されました。パッチの装着は最初の通知から平均13日後だったため、この34%を「通知時に心房細動だった人の割合」と読むことはできません。
一方、心電図パッチの装着中に再び通知が届いた場面では、通知と同時刻の心電図が心房細動に一致した割合は84%でした。34%と84%は、調べた時点と対象が異なる数字です。通知を受けたら心房細動が確定する、あるいは通知がなければ心房細動を否定できる、という意味ではありません。[5]
Apple Watchが役立ちやすいのはどんなとき?
一つは、ときどき動悸や脈の乱れを感じるものの、診察時には症状が消えているときです。不整脈は出ている瞬間の心電図が診断の手がかりになります。症状が続いている間に30秒間記録できれば、どのようなリズムだったかを後から確認できます。
もう一つは、自覚のない脈の乱れに気づくきっかけとしてです。心房細動は年齢とともに増えるため、特に中高年の方では通知を診察につなげる意義があります。ただし、通知機能だけに心房細動の発見を任せることはできません。短い発作や、測定していない時間帯の不整脈は捉えられないためです。[1][3]
Apple Watchと医療機関で行う検査は、記録の方法と長さが違います。自分で操作する30秒間の記録が役立つ場合もあれば、24時間以上続けて記録する検査が必要な場合もあります。胸痛の原因や心筋梗塞を調べる機能でもありません。[1][2]
通知が届いたら、記録をどう見せればいい?
不規則な心拍の通知が届いたら、通知を受けた日時を確認してください。そのとき動悸が続いていて心電図アプリを使える場合は、座って30秒間記録します。症状が出た時刻や、どのくらい続いたかも覚えておくと、診察で波形と照らし合わせやすくなります。

記録した心電図は、iPhoneのヘルスケアアプリからPDFで保存し、受診時に見せてください。「ヘルスケアアプリ→心臓→心電図→記録を選択→『医師に渡すためにPDFを書き出す』」の手順で書き出せます。
PDFには記録時刻が含まれ、画面のスクリーンショットより波形を確認しやすくなります。アプリに「判定不能」と表示されても、波形に手がかりが残っている場合があります。記録を消さず、そのまま見せていただいて構いません。[4]
心電図アプリに「心房細動」と表示された場合も、これまでに心房細動と診断されたことがなければ、同じようにPDFを保存して診察時に見せてください。[2]
「洞調律」と表示されても、それは記録した30秒間の結果です。別の時間に起きた不整脈まで否定するものではありません。[2]
まとめ
Apple Watchの心電図アプリは、動悸などが出たときに30秒間の心電図を残せます。不規則な心拍の通知は、気づかなかった脈の乱れを知るきっかけになります。どちらも便利ですが、通知の有無やアプリの自動判定だけで病名や治療を決めることはできません。
参考文献・資料
- 日本不整脈心電学会・日本循環器学会. 2025年 携帯型/装着型心電計の適切使用に関するコンセンサスステートメント(2025年3月一部改訂).
- Apple. Apple Watchの心電図アプリで心電図をとる.
- Apple. Apple Watch:心臓の健康に関する通知.
- American College of Cardiology. Leveraging Apple Watch for Cardiovascular Care. 2025.(※Appleの資金提供・支援を受けて作成された資料)
- Perez MV, et al. Large-Scale Assessment of a Smartwatch to Identify Atrial Fibrillation. N Engl J Med. 2019;381:1909-1917.
この記事の執筆・監修者

乾 恵輔(いぬい けいすけ) 乾小児科内科医院 院長
【保有資格】
- 日本循環器学会認定 循環器専門医
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
- 日本内科学会認定 総合内科専門医
院長よりメッセージ: Apple Watchの通知や記録は、受診のきっかけとしてとても役立ちます。通知の有無だけで判断せず、気になる記録があれば消さずにそのままお持ちください。
【循環器内科のご案内】
当院では、循環器専門医が心電図の評価から、不整脈の診断・治療まで対応しています。Apple Watchの通知が気になる方、動悸や脈の乱れを感じる方は、記録を消さずにお気軽にご相談ください。
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