睡眠時無呼吸症候群は糖尿病と関係する?血糖値が下がりにくい原因と検査の目安
「食事や薬に気をつけているのに、血糖値がなかなか目標に届かない」「家族からいびきを指摘されるけれど、もしかしたら糖尿病と関係がある?」。そんな疑問はありませんか。
実は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)と糖尿病には関連があります。血糖管理が難しく、いびきや睡眠中の呼吸停止も指摘されている方は、無呼吸が隠れていないか相談する目安になります。
血糖値が目標に届かないときは、食事や運動だけでなく、睡眠中の呼吸など、ご自身では気づきにくい要因も確認していきます。この記事では、糖尿病と睡眠時無呼吸の関係、検査を考えたいサイン、治療についてお伝えします。
目次(押すと目次が出ます)
睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に呼吸が止まったり、浅くなったりすることを繰り返す病気です。多いのは、のどの部分で空気の通り道が狭くなる「閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)」です。この記事では、主にこのタイプと糖尿病の関係を取り上げます。
いびきだけでは診断できませんが、大きないびきや呼吸停止の指摘は、病気に気づくきっかけになります。詳しい症状は、睡眠時無呼吸症候群を疑う症状は?もご覧ください。
糖尿病のある方では睡眠時無呼吸も少なくありません
糖尿病と睡眠時無呼吸は、一緒にみられることが少なくありません。
例えば日本循環器学会などの2023年改訂版ガイドラインでは、次のような研究結果が紹介されています。
| 調べた内容 | 報告されている割合・リスク |
|---|---|
| OSAのある方が2型糖尿病を発症するリスク | OSAのない方に比べて相対リスク1.4倍 |
| OSAのある方における2型糖尿病の割合 | 15〜30% |
| 2型糖尿病のある方におけるOSAの割合 | AHI≧5で86%、AHI≧15で30%以上 |
| 1型糖尿病のある方におけるOSAの割合 | AHI≧5で46% |
AHI(無呼吸低呼吸指数)は、睡眠1時間あたりに呼吸が止まったり浅くなったりする回数を示す指標です。「AHI≧5」は1時間に5回以上、「AHI≧15」は15回以上を意味し、15回以上は中等症以上にあたります。糖尿病の方は結構な割合で睡眠時無呼吸症を合併していることがわかります。
糖尿病の方で検査を考えたいサイン
2023年改訂版のガイドラインでは、糖尿病の方に対して、睡眠時無呼吸の症状を確認し、必要に応じてスクリーニング検査を行うことが推奨されています。次のようなことがあれば、普段の診察でもお知らせください。
- 大きないびきをかく、毎晩のようにいびきを指摘される
- 家族から「寝ている間に呼吸が止まっている」と言われる
- 日中に眠くなる、寝ても疲れが取れにくい
- 朝起きたときに頭が痛い
- 夜中に何度もトイレに起きる
- 治療を続けていても、血糖値や血圧が目標に届きにくい
とくに、いびきや呼吸停止の指摘に、血糖・血圧の管理の難しさが重なる場合は、睡眠時無呼吸を確認する手がかりになります。すべてに当てはまる必要はありません。眠気が目立たない方にも睡眠時無呼吸はあるため、「昼間は眠くないから大丈夫」ともいえません。
一方、夜間のトイレは高血糖やほかの病気、薬の影響でも増えます。血糖値が高い、朝に頭が痛いといったことだけで睡眠時無呼吸と決めつけず、症状の組み合わせや経過から判断します。
ご本人は、眠っている間の呼吸の様子を分かりにくいものです。「いびきが途中で止まり、その後に大きく息をする」など、ご家族が気づいたことも大切な情報になります。
血糖管理全体の見直しはHbA1cがなかなか下がらない…見直したい5つのポイント、血圧との関係は血圧が下がらないのは睡眠時無呼吸が原因?でもお伝えしています。
なぜ睡眠中の無呼吸が血糖値に影響するのでしょうか
血糖値を下げるホルモンが「インスリン」です。睡眠時無呼吸では、睡眠中の血液酸素濃度の低下や睡眠が細切れになることなどを通じて、このインスリンが効きにくくなると考えられています。

酸素の低下と体の緊張が繰り返される
呼吸が止まると血液中の酸素が減り、呼吸が再開すると戻ります。この変化が一晩に何度も起こることで、炎症などを通じて血糖調節に影響する可能性があります。
さらに、酸素の低下や呼吸の再開に伴って、体を活動・緊張させる「交感神経」が刺激されます。交感神経が活性化すると、肝臓から糖を送り出す働きなどが強まることで血糖値が上がりやすくなります。また、血圧が高くなることにもつながります。
睡眠が分断され、インスリンが効きにくくなる
無呼吸のたびに脳が短い覚醒を繰り返すと、本人が覚えていなくても睡眠は細切れになります。布団に入っている時間が長くても、十分に休めているとは限りません。
こうした睡眠の分断も、インスリンの働きに影響します。インスリンが効きにくい状態を「インスリン抵抗性」といい、同じ量のインスリンでは血糖値を下げにくくなります。
肥満も、OSAと2型糖尿病に共通する要因です。ただし、肥満がなくても睡眠時無呼吸は起こります。体格だけで判断せず、症状や検査で確認することが大切です。
当院での検査はどのように進みますか?

まずは外来でご相談ください
群馬県高崎市の乾小児科内科医院では、予約は不要です。WEB事前受付を利用すると、来院前に問診票を入力できます。
いびきや眠気、ご家族からの指摘に加え、糖尿病や高血圧などの状態も確認して、検査を検討します。健診で血糖値を指摘された方も、そのこととあわせてご相談ください。
簡易検査は自宅で原則2晩行います
簡易検査では、呼吸の状態や血液中の酸素の変化などを調べます。当院では、検査機器を宅配便でご自宅へ送り、自宅で原則2晩検査していただきます。

検査センターに機器が届いてから、3〜5日程度で結果が当院に届きます。結果は外来で説明し、症状や検査所見をあわせて、その後の検査や治療を考えます。
必要な場合は精密検査へ進みます
精密検査では、脳波なども記録し、実際の睡眠時間や睡眠の深さと、呼吸の異常との関係を詳しく調べます。当院では、自宅で行える精密検査に対応しています。入院検査が適している場合は、連携医療機関へ紹介します。
簡易検査では、実際の睡眠時間を正確に把握できず、無呼吸を少なく見積もる場合があります。結果が軽くても、呼吸停止の指摘などから疑いが強いときは、精密検査が必要になることがあります。
治療は血糖管理とあわせて考えます
肥満のある方は無理のない体重管理を
肥満のある方では、減量が睡眠時無呼吸の改善につながることがあります。食事や運動は、糖尿病の治療とあわせて取り組みましょう。寝る前の飲酒は、のどの筋肉を緩めて無呼吸を悪化させるため、控えることが勧められます。
ただし、体重が減るまで無呼吸の治療を待つ必要はありません。症状や重症度に応じて、CPAPなどの治療を並行して進めます。
CPAPは空気の圧力で気道を保つ治療です
CPAP(シーパップ)は、寝るときにマスクをつけ、空気の圧力でのどの空気の通り道がふさがらないようにする治療です。無呼吸を減らし、日中の眠気などを改善するために行います。
CPAPの保険適用は、2026年6月の診療報酬改定で、簡易検査のAHIが40以上から30以上へ、精密検査では20以上から15以上へと基準が引き下げられました。
ここは、先ほどの「OSAの有無や重症度をみる目安」とは別の、保険でCPAPを始めるための基準です。数値だけで自動的に決まるものではなく、日中の眠気などの自覚症状による日常生活への支障や、検査の所見を踏まえて判断します。
詳しくはCPAPの保険適用基準が2026年6月から変更をご覧ください。
当院では、CPAPのデータが帝人のシステム「NemLink」で送られ、毎月の通院の際に当院で確認します。
口腔内装置を検討する場合もあります
口腔内装置は、下あごを前に出して気道を広げるマウスピースです。主に軽症から中等症の方や、CPAPの継続が難しい方などで検討します。歯やあごの状態によって向き不向きがあるため、どの治療が適しているかを判断します。
CPAPを使えば血糖値やHbA1cも下がりますか?
CPAPによって血糖値やHbA1cが改善するかどうかは、研究結果が分かれており、必ず下がるとはいえません。CPAPは、まず睡眠中の無呼吸や酸素の低下、日中の眠気などを改善するための治療です。
HbA1cは、過去1〜2か月ほどの血糖の状態を反映する検査値です。2023年の研究レビューでは、HbA1cの小幅な改善が報告され、1晩のCPAP使用時間との関連も示されました。一方、2026年の研究レビューでは、治療期間ごとの解析でHbA1cや血糖値の明確な改善は認められていません。
対象となる方やCPAPの使用状況、研究方法などが異なるため、血糖管理への効果はまだ一定の結論が出ていません。CPAPの効果は、血糖値だけでなく、無呼吸の状態や眠気、日中の体調も含めて評価します。
なお、2023年改訂版のガイドラインでは、CPAPと減量を組み合わせた治療で、HbA1cが改善したことが紹介されています。糖尿病の食事療法・運動療法・薬物療法も引き続き必要です。睡眠時無呼吸の治療と血糖管理を、あわせて進めていきましょう。
いびきや睡眠のことも一緒にご相談ください
血糖値が目標に届きにくいときは、睡眠時無呼吸も確認したい要因の一つです。とくに、いびきや呼吸停止を指摘されている方は、眠気がなくても診察の際にお知らせください。
当院では、院長が睡眠時無呼吸症候群の検査・治療と、糖尿病・高血圧・心臓病をあわせて診療しています。血糖値だけでなく、眠っている間の呼吸や日中の体調にも目を向けながら、ご自身に合う治療を一緒に考えていきましょう。
参考文献・資料
- 日本循環器学会ほか「2023年改訂版 循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン」
- Foster GD, et al. Obstructive sleep apnea among obese patients with type 2 diabetes. Diabetes Care. 2009;32(6):1017–1019.
- Reutrakul S, Mokhlesi B. Obstructive Sleep Apnea and Diabetes: A State of the Art Review. Chest. 2017;152(5):1070–1086.
- Kapur VK, et al. Clinical Practice Guideline for Diagnostic Testing for Adult Obstructive Sleep Apnea: An American Academy of Sleep Medicine Clinical Practice Guideline. J Clin Sleep Med. 2017;13(3):479–504.
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要(医療技術の適切な評価)」
- Herth J, et al. Effects of continuous positive airway pressure therapy on glucose metabolism in patients with obstructive sleep apnoea and type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis. Eur Respir Rev. 2023;32(169):230083.
- Wu Y, et al. Effects of continuous positive airway pressure therapy duration on patients with obstructive sleep apnoea and type 2 diabetes mellitus: a systematic review and meta-analysis. BMJ Open Respir Res. 2026;13(1):e003324.
この記事の執筆・監修者

乾 恵輔(いぬい けいすけ) 乾小児科内科医院 院長
【保有資格】
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
- 日本循環器学会認定 循環器専門医
- 日本内科学会認定 総合内科専門医
院長よりメッセージ: 血糖値がなかなか目標に届かないとき、睡眠中の呼吸が関係していることがあります。いびきや日中の眠気のことも、診察の際に遠慮なくお知らせください。
【糖尿病内科・睡眠時無呼吸症候群のご案内】
当院では、糖尿病と循環器の両方の専門医資格を持つ院長が、睡眠時無呼吸症候群の検査・治療と、糖尿病・高血圧・心臓病をあわせて診療しています。いびきや日中の眠気が気になる方、血糖値が目標に届きにくい方は、ご相談ください。
受診をご希望の方は、WEB事前受付をご利用いただくとスムーズです。当日、症状について確認したいことがある場合は、お電話でもお問い合わせいただけます。



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