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歩くとふくらはぎが痛い?末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)の症状・検査・治療

2026/09/15
歩くとふくらはぎが痛くなる様子を示すイラスト。閉塞性動脈硬化症(PAD)の代表的な症状である間欠性跛行を表現

歩いていると、ふくらはぎや太ももが痛くなる。少し休むと楽になるけれど、また歩き始めると同じように痛くなる。

このような症状は年齢や腰の病気のためと思われがちですが、足の動脈が狭くなり、筋肉に十分な血液が届いていない可能性があります。

足の動脈が動脈硬化によって狭くなったり、詰まったりする病気が末梢動脈疾患(PAD)です。日本では以前から、閉塞性動脈硬化症(ASO)とも呼ばれてきました。

PADは足の血流不足を起こすだけでなく、心臓や脳の動脈硬化が進んでいるサインでもあります。

目次(押すと目次が出ます)

代表的な症状は「歩くと痛み、休むと楽になる」

歩いているときは、足の筋肉が多くの酸素を必要とします。しかし、動脈が狭くなっていると必要な血液を送れません。そのため、一定の距離を歩くと、ふくらはぎ、太もも、お尻などが重くなったり痛くなったりします。

歩くのをやめると数分で軽くなり、再び歩き始めると同じくらいの距離で症状が出るのが典型的です。この症状を間欠性跛行(かんけつせいはこう)といいます。心臓の血管が狭くなって運動時に胸が痛くなる狭心症と仕組みが似ているため、PADは「足の狭心症」と表現されることもあります。

一方で、足の冷えやしびれだけのこともあれば、動脈が狭くなっていても目立った症状がないこともあります。糖尿病による神経障害がある方や、もともと歩く機会が少ない方では、血流不足があっても痛みを感じにくいため注意が必要です。

腰部脊柱管狭窄症との違い

歩くと足が痛くなる病気には、腰部脊柱管狭窄症など、腰の神経が原因となるものもあります。

比較点末梢動脈疾患による間欠性跛行腰部脊柱管狭窄症による症状
症状が出やすい場面一定の距離を歩いたとき立っているときや歩いたとき
楽になりやすい動作歩くのをやめて休む座る、前かがみになる
痛みの出方ふくらはぎなどの筋肉痛、重さお尻から足にかけての痛みやしびれ
足の脈や皮膚脈が弱い、冷たい、色が悪いことがある通常は足の血流に異常がない

実際には両方が重なっていることもあり、症状だけでは区別できません。診察やABI検査で足の血流を確認することが重要です。

進行すると安静時の痛みや治りにくい傷が現れる

血流不足が進むと、歩いていないときにも足先が痛むようになります。特に、夜に横になると痛み、足をベッドから下ろすと少し楽になる場合は、強い血流不足が疑われます。

さらに進行すると、足の指やかかとにできた傷が治らない、皮膚が黒くなる、組織が壊死するといった状態になることがあります。これは足を失う危険があるほど血流が低下した状態で、専門的にはCLTIと呼ばれます。足を守るために早急な治療が必要です。

糖尿病による神経障害がある方では、傷ができても痛みに気づきにくく、感染を伴って急速に悪化することがあります。足を毎日観察し、小さな傷でも放置しないことが大切です。

PADの症状が血流不足とともに進行する3段階を示す図解。歩くと痛み休むと軽くなる間欠性跛行、安静にしても痛む安静時疼痛、傷が治らない潰瘍・壊死へと進行することを示す

全員がこの経過をたどるわけではなく、早期の受診・治療で進行を防げます。

突然の強い痛みや冷えは緊急症状

突然、片足が強く痛む、白くなる、冷たくなる、しびれる、動かしにくくなる場合は、足の動脈が急に詰まる急性下肢虚血の可能性があります。

数時間で神経や筋肉に回復できない障害が起こることがあるため、通常の外来予約を待たず、すぐに救急医療機関を受診してください。

PADになりやすい人

PADは年齢とともに増えますが、年齢だけで起こる病気ではありません。特に関係が深いのは、喫煙と糖尿病です。

このほか、高血圧、脂質異常症、慢性腎臓病、透析治療、心筋梗塞や脳梗塞の既往なども発症リスクを高めます。複数の要因が重なるほど注意が必要です。

足だけでなく、心臓や脳の血管にも注意が必要

PADは、足だけに動脈硬化が起きた病気とは限りません。心臓や脳の血管にも動脈硬化が進み、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などを合併していることがあります。

治療では足の症状を軽くするだけでなく、禁煙や血圧・血糖・コレステロールの管理を通じて、全身の血管を守ることが重要です。

PADの検査

問診と診察

まず、どのくらい歩くと症状が出るか、休むと何分で軽くなるか、左右どちらに出るかなどを確認します。喫煙歴や糖尿病、高血圧、脂質異常症、腎臓病の有無も重要です。

診察では、足の付け根、膝の裏、足首、足の甲などの動脈を触り、脈が弱くなっていないかを確認します。左右の皮膚温や色、傷、爪や皮膚の変化なども観察します。

ABI(足関節上腕血圧比)

PADを調べる基本的な検査がABIです。両腕と両足首の血圧を測り、足首の収縮期血圧を腕の収縮期血圧で割って求めます。痛みはほとんどなく、短時間で検査できます。

ABI(足関節上腕血圧比)検査の説明図。仰向けで腕と足首の血圧を測定し、足首の血圧を腕の血圧で割った値が0.90以下だと足の血流低下が疑われることを示す
ABI一般的な評価
0.90以下異常低値。足の動脈の狭窄や閉塞が疑われる
0.91~0.99境界域
1.00~1.40正常範囲
1.40超異常高値。動脈の強い石灰化などが疑われる

糖尿病や慢性腎臓病がある方では、動脈の石灰化によってABIが実際より高く出ることがあります。また、安静時のABIが正常でも、歩行時にだけ血流不足が現れる場合があります。症状とABIの結果が合わないときは、運動後のABIや足の指の血圧など、別の検査を追加します。

当院では、両腕と両足の血圧を同時に測定する血圧脈波検査を行っています。PADの評価にはABIを用い、同時に測定される脈波伝播速度では血管の硬さを評価します。

必要に応じて行う画像検査

ABIなどでPADが疑われた場合には、下肢血管エコーで血流や狭窄部位を調べます。血流を回復させる治療を検討するときには、病変の位置や長さを詳しく確認するため、CT血管造影(CTA)やMR血管造影(MRA)、カテーテルを用いた血管造影などを行います。

PADの治療

PADの治療には、心筋梗塞や脳梗塞を防いで全身の血管を守ることと、足の症状を改善して傷や壊死、下肢切断を防ぐことの二つの目的があります。

1.全身の血管を守る治療

喫煙はPADの発症と悪化に強く関係するため、禁煙が治療の重要な柱です。高血圧、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病も適切に管理します。禁煙については高崎市で禁煙外来を受けるなら|費用・流れ・よくある質問をまとめましたでも解説しています。

動脈硬化によるPADでは、LDLコレステロールを下げるスタチンなどの治療が重要です。症状のあるPADでは、心筋梗塞や脳梗塞を防ぐため、アスピリンやクロピドグレルなどの抗血小板薬を使用します。スタチン系薬については脂質異常症治療薬:スタチン系薬の効果と副作用でも詳しく解説しています。

2.歩ける距離を延ばす治療

歩くと足が痛み、休むと軽くなる間欠性跛行では、運動療法と薬物療法が治療の基本です。

運動療法では、無理のない速さで歩き、足に中等度の痛みが出たところで休みます。痛みが軽くなったら再び歩くことを繰り返すことで、歩ける距離や生活の質の改善が期待できます。

薬では、間欠性跛行の改善を目的としてシロスタゾールなどを使用します。シロスタゾールには歩行距離を延ばす効果がありますが、心不全を悪化させるおそれがあるため、心不全のある方には使用できません。

安静時にも足が痛む方や、足に治りにくい傷や壊死がある方は運動療法の対象ではなく、血流を回復させる治療を早急に検討します。

3.血流を回復させる治療

運動療法や薬物療法を続けても歩行症状によって日常生活が大きく制限される場合には、カテーテル治療やバイパス手術を検討します。安静時痛、治りにくい潰瘍、壊死がある場合には、足を守るために早期の治療が必要です。

カテーテル治療では、狭くなった部分をバルーンで広げ、必要に応じてステントなどを留置します。バイパス手術では、自分の静脈や人工血管を使って、詰まった部分を迂回する新しい血流の通り道を作ります。

どちらが適しているかは、病変の位置や長さ、石灰化の程度、全身状態、治療後の耐久性などを踏まえて判断します。当院では、こうした治療が必要と考えられる場合には、専門の医療機関と連携して診療を行います。

まとめ

末梢動脈疾患(PAD)は、歩くとふくらはぎなどが痛み、休むと軽くなる症状が特徴です。足だけの問題ではなく、全身の動脈硬化が進んでいるサインでもあります。一定の距離を歩くと足が痛む、以前より歩ける距離が短くなった、片足だけ冷たい、足の傷がなかなか治らないといった症状がある方は、早めに循環器内科へご相談ください。

参考文献


この記事の執筆・監修者

高崎市の乾小児科内科医院 院長 乾恵輔

乾 恵輔(いぬい けいすけ) 乾小児科内科医院 院長

【保有資格】

  • 日本循環器学会認定 循環器専門医
  • 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
  • 日本内科学会認定 総合内科専門医

院長よりメッセージ: 歩くと足が痛む症状は、加齢のせいと見過ごされがちですが、足だけでなく心臓や脳の血管の状態を知る手がかりにもなります。気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。


歩くと足が痛むときは循環器内科へご相談ください 

当院では、問診と診察に加えてABIを含む血圧脈波検査を行い、必要に応じて専門医療機関と連携します。

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