【循環器専門医が解説】不整脈とは?症状・原因・検査・治療と受診の目安
「急に胸がドキドキする」
「脈が飛ぶような感じがする」
「なんとなく胸が変な感じがする」
このような症状があると、「心臓に大きな病気があるのでは」と心配になる方も多いと思います。
不整脈には、健康な人にもみられる心配の少ないものがある一方、早めの検査や治療が必要なものもあります。症状だけで不整脈の種類を判断することは難しく、診断には症状があるときの心電図を記録することが重要です。
心臓の診療を専門にしている私でさえ、胸に違和感が出ると、問題のないものだと頭では分かっていても、症状が落ち着くまで「本当に大丈夫かな」と気になることがあります。
この記事では、不整脈で起こる症状や原因、受診の目安、医療機関で行う検査と治療について、循環器専門医が分かりやすく解説します。
目次(押すと目次が出ます)
1.不整脈とは?
心臓は、心臓の中で作られる電気信号によって一定のリズムで収縮しています。この電気信号の作られ方や伝わり方に異常が起こり、脈が速くなる、遅くなる、または不規則になる状態をまとめて「不整脈」と呼びます。
不整脈は、脈の現れ方から次の3つに整理すると理解しやすくなります。
- 脈が速くなる「頻脈」
- 脈が遅くなる「徐脈」
- 脈が飛ぶ、乱れる「期外収縮などの不整脈」
これは一般向けの大まかな分け方で、実際の診断では心電図の波形から不整脈の種類を詳しく確認します。症状をまったく感じず、健康診断の心電図で初めて見つかることもあります。

成人の安静時心拍数は、一般に1分間60~100回程度です。100回を超える場合を頻脈、60回未満の場合を徐脈と呼びます。ただし、50~59回程度でも症状がなく、スポーツ習慣がある方などでは病気ではないことがあります。数字だけでなく、めまい、息切れ、失神などの症状を伴うかが重要です。
予定より早いタイミングで心臓が収縮する「期外収縮」では、一瞬「ドキッ」としたり、脈が抜けたりするように感じることがあります。
2.不整脈でみられる症状
不整脈による症状は、人によってさまざまです。
- 胸がドキドキする
- 脈が飛ぶ、抜ける、乱れる感じがする
- 胸が一瞬つまる、胸に違和感がある
- 息切れ、だるさがある
- めまい、ふらつきがある
- 胸が痛い、苦しい
- 意識が遠のく、失神する
不整脈があっても症状がない方もいれば、比較的心配の少ない期外収縮でも強い不快感を覚える方もいます。反対に、治療が必要な心房細動があっても、ほとんど症状を感じない場合があります。
そのため、症状の強さだけで不整脈の危険性を判断することはできません。
3.不整脈の主な種類
期外収縮
本来とは異なる場所から予定より早く電気信号が出る不整脈です。「脈が飛ぶ」「一瞬ドキッとする」と感じることがあります。
健康な人にもみられ、多くは治療を必要としません。ただし、回数が多い、症状が強い、運動中に増える、心臓病があるといった場合には詳しい検査が必要です。
心房細動
心房が細かく震え、脈が不規則になる不整脈です。動悸や息切れが出ることもありますが、無症状で見つかることもあります。
心房細動では心臓の中に血栓ができ、その血栓が脳の血管に詰まって脳梗塞を起こすことがあります。年齢や持病などから脳梗塞の危険性を評価し、必要に応じて血液を固まりにくくする抗凝固薬を使用します。
発作性上室性頻拍
突然脈が速くなり、突然元に戻ることが多い不整脈です。若い方にもみられ、脈が規則正しく速くなるのが特徴です。
発作が短く症状が軽い場合は経過をみることもありますが、繰り返す場合や生活に支障がある場合には、薬やカテーテルアブレーションによる治療を検討します。
徐脈性不整脈
心臓の電気信号を作る力が弱くなったり、電気信号が途中で伝わりにくくなったりして、脈が遅くなる不整脈です。
脈が遅くても症状がなければ治療を必要としない場合があります。一方、めまい、息切れ、失神などを伴う場合には、ペースメーカーが必要になることがあります。
心室頻拍・心室細動
心臓のポンプ機能を担う心室から発生する、危険性の高い不整脈です。冷や汗、めまい、失神、心停止を起こすことがあります。
頻度の高い不整脈ではありませんが、意識を失うような症状がある場合には、速やかな評価が必要です。
それぞれの危険度の違いについて、より詳しくは「危険な不整脈とは?タイプによる危険度の違い」もあわせてご覧ください。
4.不整脈の原因・背景疾患・誘因
不整脈には、心臓や全身の病気を背景に起こるものと、睡眠不足、飲酒、脱水などをきっかけに起こるものがあります。必ずしも心臓病がある方だけに起こるわけではなく、加齢や体質が関係することもあります。

心臓の病気
心筋梗塞、狭心症、心不全、心筋症、心臓弁膜症、先天性心疾患などが不整脈の背景にある場合があります。
狭心症や心筋梗塞は「心臓を栄養する血管」の病気、不整脈は主に「心臓の電気信号」の異常です。基本的には異なる仕組みですが、心筋梗塞や心不全に不整脈が合併することがあります。
心臓以外の病気や体の変化
高血圧、甲状腺機能異常、貧血、発熱、脱水、電解質異常、睡眠時無呼吸症候群なども、不整脈の背景やきっかけになります。
生活上の誘因
睡眠不足、過労、強いストレス、多量の飲酒、喫煙、カフェインやエナジードリンクの過剰摂取などが動悸や不整脈を誘発することがあります。
カフェインに対する反応には個人差があり、通常量のコーヒーをすべての方がやめる必要はありません。飲んだあとに動悸が出る方は、量を減らして症状が変わるか確認してみましょう。
薬の影響
一部の心臓病や血圧の薬、気管支を広げる薬、抗うつ薬、市販のかぜ薬などが、脈の速さや心臓の電気信号に影響する場合があります。
自己判断で薬を中止するのは危険です。市販薬やサプリメントを含め、服用しているものを受診時に医師へ伝えてください。
5.家庭で確認しておきたいこと

手首で脈を測る
椅子に座って数分間安静にしたあと、反対側の手の人差し指・中指・薬指を、手首の親指側に軽く当てます。脈の速さだけでなく、間隔が規則正しいかも確認してください。
脈が規則正しければ、15秒間の脈拍数を数えて4倍すると、1分間のおおよその心拍数が分かります。脈が不規則な場合は、できれば60秒間数えてください。
自分で脈を測るだけでは、不整脈の種類までは診断できません。明らかに不規則な状態を繰り返す場合は、医療機関で心電図検査を受けましょう。
症状が起きたときの状況を記録する
症状が始まった日時、何をしていたときに起きたか、突然始まったか、どのくらい続いたかを記録しておくと診断に役立ちます。測定できた心拍数や血圧、胸痛、息切れ、めまいなどの有無も一緒に残しておきましょう。
家庭用血圧計の不整脈表示やスマートウォッチ、携帯型心電計の記録も参考になります。これらだけで診断を確定することはできず、通知が出なければ不整脈がないとも言い切れませんが、保存された記録は受診時の大切な手がかりになります。
6.医療機関で行う検査
不整脈の診断では、症状の頻度や起こる状況に合わせて検査を選びます。

図は一般的な目安です。実際には、症状の内容や持続時間、基礎疾患なども考慮して検査方法を決めます。
12誘導心電図

胸や手足に電極をつけて、心臓の電気信号を記録する一般的な心電図です。不整脈を疑って受診した場合に、まず行う検査のひとつです。
記録できるのは数十秒程度のため、検査中に不整脈が出ていなければ、結果が正常でも発作性の不整脈を否定できません。
検査時間の目安:数分程度
血液検査
貧血、甲状腺機能、電解質、腎機能など、不整脈の原因や治療に関係する異常がないか確認します。
心臓超音波検査
超音波を使って、心臓の動き、大きさ、弁の状態などを調べます。不整脈の背景に心不全、心筋症、弁膜症などがないかを評価します。
検査時間の目安:10~20分程度
ホルター心電図・長時間心電図

小型の心電計を装着して、日常生活中の心電図を長時間記録します。通常の心電図では捉えられなかった不整脈や、症状が出た時刻の心電図を確認できます。
症状がほぼ毎日ある場合には24時間心電図、数日に1回程度ならより長期間の記録が役立ちます。症状の頻度がさらに少ない場合は、携帯型心電計などを検討することもあります。
当院では、最長7日間記録できるホルター心電図「Liz」を導入しています。詳しくは「24時間では見つからない不整脈も。7日間ホルター心電図『Liz』を導入しました」をご覧ください。
運動負荷心電図
心電図と血圧を記録しながら運動し、運動によって不整脈や心筋虚血が起こらないかを調べます。運動中に症状が出る場合などに検討します。
検査時間の目安:20~30分程度
電気生理学的検査
足の付け根などの血管から細いカテーテルを心臓まで進め、心臓内の電気信号を詳しく調べる検査です。すべての方に行う検査ではなく、治療が必要な不整脈が疑われる場合などに、専門病院で入院して行います。
7.不整脈の治療
不整脈が見つかっても、すべての方に治療が必要なわけではありません。不整脈の種類、症状、心臓の状態、年齢、ほかの病気などを総合して治療方針を決めます。
経過観察と原因への対応
健康な方にみられる少数の期外収縮など、危険性が低く症状も軽い場合は、治療をせず経過をみることがあります。
甲状腺機能異常、貧血、脱水、睡眠時無呼吸症候群などが関係している場合は、その治療を行います。睡眠不足や多量の飲酒など、症状のきっかけが分かっている場合は生活習慣も見直します。
薬による治療
不整脈の状態に応じて、脈を整える、速すぎる脈を抑える、心房細動による血栓や脳梗塞を防ぐといった目的で薬を使用します。
薬にはそれぞれ注意点があり、不整脈の種類や心臓の状態によっては適さないものもあります。自己判断で増減・中止せず、医師の指示どおり服用してください。
カテーテルアブレーション
足の付け根などからカテーテルを心臓まで進め、不整脈の原因となる異常な電気回路を治療します。発作性上室性頻拍、心房粗動、心房細動など、さまざまな不整脈に行われています。
ペースメーカーなどの植込み型機器
症状を伴う徐脈性不整脈にはペースメーカーを使用することがあります。また、命に関わる心室性不整脈の危険性が高い場合には、植込み型除細動器を検討します。
8.生活上の注意
睡眠不足や過労、強いストレスは、動悸や期外収縮のきっかけになることがあります。まずは十分な睡眠と休養を確保しましょう。
多量の飲酒も、期外収縮や心房細動などの誘因になります。飲酒後に動悸が起こる方や心房細動を指摘されている方は、飲酒量を減らすことが大切です。
喫煙は一部の不整脈だけでなく、狭心症や心筋梗塞などの心血管病のリスクも高めます。禁煙が難しい場合は、禁煙外来なども活用してください。
カフェインで動悸が出やすい方は量を控え、エナジードリンクの大量摂取は避けましょう。すでに不整脈と診断されている方は、運動、飲酒、入浴などについて主治医から個別の指示がある場合には、その指示を優先してください。
9.不整脈についてよくある質問
Q.期外収縮は放置しても大丈夫ですか?
健康な人にもみられ、多くは治療を必要としません。ただし、回数が多い、症状が強い、運動中に起こる、心臓病があるといった場合は検査が必要です。症状だけで自己判断せず、一度心電図で確認しましょう。
Q.不整脈があっても症状がなければ問題ありませんか?
症状のない不整脈にも、経過観察でよいものと治療が必要なものがあります。特に心房細動は無症状でも脳梗塞予防が必要になる場合があるため、健康診断や家庭用機器で指摘されたら受診してください。
Q.スマートウォッチで不整脈と表示されました。どうすればよいですか?
スマートウォッチは不整脈に気づくきっかけになりますが、それだけで確定診断はできません。心電図波形が保存されている場合は削除せず、受診時に医師へ見せてください。胸痛、息苦しさ、失神などを伴う場合は、早急な受診が必要です。
10.まとめ
不整脈には、健康な人にも起こる心配の少ないものから、早めの治療が必要なものまでさまざまな種類があります。
- 症状の強さだけでは、不整脈の種類や危険性を判断できない
- 症状が起きた日時、心拍数、持続時間を記録しておくと診断に役立つ
- 通常の心電図で異常がなくても、長時間心電図で見つかることがある
- 不整脈があっても必ず治療が必要とは限らず、心房細動では脳梗塞予防が重要になる
「たまにしか起こらないから、受診しても分からないのでは」と思う方もいます。しかし、症状が起きたときの記録や、24時間・7日間の心電図が診断の手がかりになります。動悸や脈の乱れを繰り返す場合は、一度循環器内科へご相談ください。
参考資料
- 日本循環器学会・日本不整脈心電学会「不整脈薬物治療ガイドライン(2020年改訂版)」
- 日本循環器学会・日本不整脈心電学会「不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)」
- 日本循環器学会・日本不整脈心電学会「2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン」
- 日本循環器学会・日本不整脈心電学会「2024年JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療(2025年5月更新)」
- 日本循環器学会「一般のみなさまへ各疾患のご案内 不整脈」
※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としています。個別の診断や治療については、医療機関へご相談ください。
この記事の執筆・監修者

乾 恵輔(いぬい けいすけ) 乾小児科内科医院 院長
【保有資格】
- 日本循環器学会認定 循環器専門医
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
- 日本内科学会認定 総合内科専門医
院長よりメッセージ: 胸の違和感や動悸には心配の少ないものも多い一方、なかには詳しい検査や治療が必要な不整脈もあります。気になる症状がある方は一人で判断せず、まずは心電図で確認しましょう。必要に応じて、長時間心電図などで詳しく調べます。
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