【医師が解説】ユリス(ドチヌラド)とは?効果・副作用とフェブリクとの違い
健康診断で「尿酸値が高い」と指摘されたことのある方は少なくありません。
高尿酸血症が続くと、ある日突然、足の親指などに激しい痛みを起こす「痛風発作」につながることがあります。
ユリス(一般名:ドチヌラド)は、高尿酸血症・痛風の治療に使われる尿酸降下薬です。
ユリスの特徴を一言でいうと、
「腎臓で尿酸が体内へ戻るのを抑えて、尿として外へ出しやすくする薬」
です。
この記事では、
について解説します。
目次(押すと目次が出ます)
ユリス(ドチヌラド)とは?
ユリスは、尿酸を尿から排泄しやすくする尿酸排泄促進薬です。
一般名は「ドチヌラド」といい、選択的尿酸再吸収阻害薬(SURI:Selective Urate Reabsorption Inhibitor)に分類されます。
日本では2020年から使用されており、日本痛風・尿酸核酸学会の「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版 2022年追補版」にもユリスについての記載が追加されています。
そもそも高尿酸血症とは?
血液中の尿酸値が7.0mg/dLを超えた状態を高尿酸血症といいます。
尿酸は、体内のプリン体が分解されたときにできる物質です。
通常は血液中を流れたあと、主に腎臓、一部は腸管から体外へ排泄されます。
ところが、
- 尿酸をうまく排泄できない
- 体内に入ってくる・作られる尿酸が多い
- その両方がある
といった状態になると、血液中の尿酸が増えていきます。
現在、高尿酸血症は大きく尿酸排泄低下型、腎負荷型、混合型に分類されます。
以前は「尿酸産生過剰型」という分類がよく使われていましたが、現在は腸管など腎臓以外からの尿酸排泄低下も含めて「腎負荷型」と整理されています。
尿酸排泄低下型、腎負荷型、混合型とは
尿酸排泄低下型
腎臓から尿酸を十分に排泄できず、体内に尿酸がたまりやすくなるタイプです。
日本人の高尿酸血症ではこのタイプが多く、ユリスは主にこの「尿酸を外へ出しにくい状態」に対して作用する薬と考えるとわかりやすいでしょう。
腎負荷型
腎臓に流れ込む尿酸の量が多くなっているタイプです。
以前は「尿酸産生過剰型」と呼ばれることが多かったのですが、現在は、単に尿酸が作られすぎるだけでなく、腸管など腎臓以外からの尿酸排泄が低下した結果、腎臓にかかる尿酸の負担が増えている場合も含めて「腎負荷型」と整理されています。
混合型
尿酸を排泄しにくい状態と、腎臓に流れ込む尿酸が多い状態の両方をあわせ持つタイプです。
ただし実際の診療では、この病型だけで治療薬を機械的に決めるわけではありません。
尿酸値、腎機能、尿路結石の有無、合併症、これまで使用した薬などをみながら治療薬を選びます。
尿酸値が高いと、なぜ痛風になる?
血液中の尿酸が多い状態が続くと、尿酸が「尿酸塩結晶」となって関節などに少しずつたまっていきます。
この尿酸塩結晶に対して強い炎症が起こったものが痛風発作です。
典型的には足の親指の付け根が突然赤く腫れ、かなり強い痛みを伴います。
ただし、尿酸塩の結晶は「痛風発作が起きたときだけ存在する」わけではありません。
痛みがない時期にも関節などに少しずつ蓄積し、ある時それをきっかけに炎症が起こります。
山に雪がしんしんと積もっている間はなんともないのですが(尿酸が溜まっている状態)、ある時ふとしたことから雪が崩れるとザーッと雪崩が起きてしまう(痛風発作)というイメージです。
そのため痛風治療では、単にその日の尿酸値を正常範囲にするだけではなく、体内にたまった尿酸塩を少しずつ減らしていくことが重要になります。
ユリスはどうやって尿酸値を下げる?
ここがユリスを理解する一番大切なところです。
腎臓では、血液中の尿酸をいったん尿細管へ濾過します。
しかし、その尿酸がすべてそのまま尿として排泄されるわけではありません。
近位尿細管にはURAT1(尿酸トランスポーター1)という仕組みがあり、一度尿側へ出た尿酸の一部を再び体内へ戻しています。
ユリスは、このURAT1を選んで狙うように阻害します。
つまり、
尿酸を体内へ戻す働きをブロック
↓
尿酸が尿へ排泄されやすくなる
↓
血液中の尿酸値が下がる
という仕組みです。
ユリスは、尿酸の輸送に関わるいくつかの仕組みの中でも、主にURAT1を狙って作用します。これを専門的には「選択的」といい、そのため「選択的尿酸再吸収阻害薬」と呼ばれています。

フェブリクとユリスは何が違う?
高尿酸血症の治療でよく使用される薬に、フェブリク(一般名:フェブキソスタット)があります。
どちらも尿酸値を下げる薬ですが、働き方が違います。
フェブリク
尿酸を「作る」働きを抑える薬
キサンチンオキシダーゼという酵素を阻害し、尿酸そのものが作られる量を減らします。
ユリス
尿酸を「尿へ出す」薬
URAT1を阻害し、一度尿側へ出た尿酸が体内へ再吸収されるのを抑えます。
簡単にいうと、
フェブリク → 尿酸を作らせない
ユリス → 尿酸を体内に戻さず体外へ出す
という違いです。
どちらが必ず優れているというわけではありません。
実際には尿酸値、腎機能、尿路結石の有無、合併症、これまで使用した薬などを考慮した上で選択します。
ユリスの効果は?
ユリスは新しい作用機序の薬として開発されたため、既存の尿酸降下薬との比較試験が行われています。
ユリノームとの比較
同じ尿酸排泄促進薬であるユリノーム(一般名:ベンズブロマロン)との国内第III相試験では、
- ユリス 2mg
- ユリノーム 50mg
が比較されました。
投与終了時の血清尿酸値低下率は、
ユリス:約45.9%低下
ユリノーム:約43.8%低下
で、ユリスのユリノームに対する非劣性が確認されました。
「非劣性」という言葉は少し分かりにくいですが、
「尿酸値を下げる効果がユリノームに劣らないことが確認された」
という意味です。
フェブリクとの比較
フェブリクとの国内第III相試験も行われています。
投与終了時の血清尿酸値低下率は、
ユリス:約41.8%低下
フェブリク:約44.0%低下
で、こちらもユリスのフェブリクに対する非劣性が確認されています。
ただし、
「尿酸値を下げる効果が同程度」=「まったく同じ薬」
ではありません。
作用する場所や副作用、注意すべき点が異なるため、患者さんの状態に応じた使い分けが必要です。

ユリスは0.5mgから少しずつ増やします
ユリスには、
- 0.5mg錠
- 1mg錠
- 2mg錠
があります。
通常は1日1回0.5mgから開始します。
その後、尿酸値を確認しながら徐々に増量し、通常の維持量は1日2mgです。
患者さんの状態に応じて調整し、最大量は1日4mgです。
現在の添付文書では、0.5mgから開始し、2週間以降に1mg、6週間以降に2mgへ増量するなど、尿酸値を確認しながら段階的に増量することが示されています。
なぜ最初から2mgを飲まないの?
「どうせ尿酸値を下げるなら、最初からしっかり下げた方がいいのでは?」
と思うかもしれません。
ところが、尿酸値を急激に下げると、治療開始直後に痛風発作が起こりやすくなることがあります。
これは薬が効いていないからではありません。
尿酸値が急激に変化すると、関節などにたまっていた尿酸塩結晶の状態が変化し、炎症が誘発されることがあるためです。
そのため尿酸降下薬は、少量から開始して徐々に尿酸値を下げていきます。
ユリスの主な副作用
ユリスで比較的よくみられる副作用のひとつが、痛風関節炎(痛風発作)です。
先ほど説明したように、特に治療開始後の尿酸値の変化によって発作が起こることがあります。
そのほか添付文書には、
- 関節炎
- 関節痛
- 四肢の不快感
- 軟便、下痢、悪心
- γ-GTP、AST、ALTなど肝機能検査値の上昇
- 腎結石
- 腎石灰沈着症
- 血清クレアチニン上昇
などが記載されています。
特に注意したいのが尿路結石
ユリスは尿酸を尿へ排泄する薬です。
そのため、特に治療開始直後は尿中へ排泄される尿酸量が増えることがあります。
尿が酸性に傾いていると尿酸の結晶ができやすくなり、尿路結石につながる可能性があります。
そのため、脱水にならないよう十分な水分摂取を心がけることが大切です。
ただし、心臓や腎臓の病気などで水分制限を指示されている方は、自己判断で水分を増やさず主治医の指示に従ってください。
また、尿が酸性に傾いている場合などには、必要に応じて尿をアルカリ化する薬(クエン酸製剤など)を併用することもあります。
すでに尿路結石がある患者さんについては、治療上やむを得ない場合を除き投与を避けることとされています。
実際の診療でも十分な尿酸低下が得られることが多い一方、使用前には結石の有無を必ず確認しています。
腎機能が低下していても使える?
ユリスは腎臓の近位尿細管に作用する薬なので、腎機能を確認しながら使用します。
軽度から中等度の腎機能低下がある方にも使用されることがあります。
一方、現在の添付文書では、eGFR 30mL/min/1.73m²未満の重度腎機能障害では、他の薬による治療を考慮することとされています。
また、乏尿・無尿の患者さんでは十分な効果が期待できないため、投与を避けます。
肝臓への副作用は?
従来の尿酸排泄促進薬であるユリノーム(ベンズブロマロン)は、まれではあるものの重篤な肝障害に注意が必要な薬です。
ユリスは、こうした従来薬の問題点を減らすことを目指して開発された薬で、ユリノームのような重篤な肝障害は大きな問題として報告されていません。ただし、肝機能検査値が上昇することはあるため、定期的な血液検査が必要です。
ただし、肝機能の異常がまったく起こらないわけではないため、必要に応じて血液検査で確認します。
痛風発作が起きたらユリスは中止する?
ここは非常に誤解されやすいところです。
ユリスをまだ飲んでいない場合
痛風発作が起きている最中に新しくユリスを開始すると、発作を悪化させる可能性があります。
そのため、ユリスを開始する前から痛風発作が起きている場合には、発作がおさまるまで開始しません。
すでにユリスを飲んでいる場合
一方、ユリスを服用している途中に痛風発作が起きた場合には対応が違います。
自己判断でユリスを中止したり、量を変更したりしないでください。
現在の添付文書では、ユリスの用量を変更せず継続し、必要に応じてコルヒチン、NSAIDs、副腎皮質ステロイドなどで痛風発作を治療することとされています。
つまり、
「痛風が出た=尿酸の薬をやめる」
ではありません。
痛風発作が起きた場合には、処方している医師に相談してください。
なぜ尿酸値を6mg/dL以下まで下げるの?
高尿酸血症の定義は尿酸値7.0mg/dL超です。
そのため、
「6.8mg/dLまで下がったから、もう正常ですよね?」
と思われる方もいるかもしれません。
しかし、すでに痛風を起こしたことがある方では話が少し違います。
痛風では、単に検査値を「正常範囲」に戻すだけでなく、関節などにたまっている尿酸塩結晶を少しずつ減らしていくことが治療の目的になります。
そのため、痛風を起こしたことがある方では、一般に血清尿酸値6.0mg/dL以下を目標に治療します。
尿酸値をこの範囲に維持することで、新しい尿酸塩結晶ができにくくなり、すでにたまっている尿酸塩も徐々に減っていくことが期待されます。

場合によっては5mg/dL未満を目指すことも
一方、痛風発作を何度も繰り返している方や、痛風結節がある方では、体内にたまっている尿酸塩の量が多い可能性があります。
日本のガイドラインでは、こうした方でも尿酸塩結晶を消失させるために6mg/dL以下を維持することが重要とされています。一方、海外のガイドラインでは、一時的に5mg/dL未満を目指す考え方も示されており、患者さんの状態をみながら検討することがあります。
尿酸値をより低く保つほど、関節にたまった尿酸結晶が速く減少することを示した研究もあります。詳しくは尿酸値が低いほど尿酸結晶は早く減少する、は本当か?をご覧ください。
ただし、すべての方で5mg/dL未満を目指すわけではありません。
発作の頻度、尿酸塩の沈着量、腎機能、合併症などを考えながら、一人ひとり治療目標を決めます。
つまり尿酸治療は、
「7を切ったら終わり」
ではありません。
痛風がある方では、尿酸塩をためない、そしてすでにたまっている尿酸塩を減らしていくことまで考えて治療していきます。
高尿酸血症なら全員が薬を飲むの?
いいえ。
尿酸値が高いからといって、すべての方がすぐに薬を飲むわけではありません。症状がない方の考え方については、痛くないから大丈夫?尿酸が高いと言われたらもあわせてご覧ください。
尿酸値そのものだけでなく、
- 痛風発作を起こしたことがあるか
- 尿路結石があるか
- 腎機能はどうか
- 高血圧や糖尿病などの合併症があるか
- 尿酸値がどのくらい高いか
などを総合的に考えて治療方針を決めます。
高尿酸血症は腎臓病や心血管疾患などさまざまな病気との関連が報告されていますが、尿酸値を薬で下げれば、それだけで腎臓や心臓の病気を防げるとまでは現在のところ言い切れません。
2025年に日本痛風・尿酸核酸学会の若手委員会がまとめた最新知見でも、尿酸と腎臓病、動脈硬化、高血圧、心血管疾患などとの関連について多くの研究が紹介される一方、因果関係や尿酸降下療法による臓器保護効果については、まだ整理が必要な部分が残っています。
薬だけでなく生活習慣も大切
ユリスを飲めば、食生活を気にしなくてよいというわけではありません。
高尿酸血症というと、
「プリン体を多く含んだ食品・飲料をとらないようにしなければ」
というイメージが強いかもしれません。
もちろん、プリン体の多い食品を大量に摂ることは避けた方がよいでしょう。
ただし最近では、プリン体だけを極端に制限するより、食生活全体を整えることが大切と考えられています。
具体的には、
- 食べ過ぎを避ける
- 肥満があれば減量する
- アルコールを飲みすぎない
- 果糖を多く含む清涼飲料水などを摂りすぎない
- 野菜などを含むバランスのよい食事を心がける
- 脱水を避ける
- 適度な運動を続ける
といった生活習慣が重要です。
特にアルコールについては、
「プリン体ゼロのお酒なら大丈夫」
というわけではありません。
アルコールそのものが尿酸値や痛風発作に影響するため、種類にかかわらず飲みすぎには注意しましょう。
まとめ
ユリス(ドチヌラド)は、腎臓で尿酸が体内へ戻るのを抑え、尿として排泄しやすくする薬です。
- 通常は0.5mgから開始し、少しずつ増量します
- フェブリクとは作用の仕組みが異なり、国内第III相試験ではユリス2mgがフェブリク40mgに劣らない尿酸低下効果を示しています
- 尿路結石や治療開始直後の痛風発作には注意が必要です
- すでに痛風を起こしている方では、一般に尿酸値6mg/dL以下を目標にし、発作を繰り返す方などではより低い値を検討することがあります
痛風治療で大切なのは、単に尿酸値を「7未満」にすることではありません。
体内にたまった尿酸塩を少しずつ減らし、痛風発作を起こしにくい状態をつくっていくことが治療の目標です。
痛みがなくなるとついつい病院から足が遠のいてしまう方も少なくありませんが、継続して治療していくことが重要です。
この記事の執筆・監修者

乾 恵輔(いぬい けいすけ) 乾小児科内科医院 院長
【保有資格】
- 日本循環器学会認定 循環器専門医
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
- 日本内科学会認定 総合内科専門医
院長よりメッセージ: 当院は、公益財団法人痛風・尿酸財団の認定医療機関です。群馬県内でこの認定を受けているのは、当院を含めて2施設のみです。尿酸値や痛風でお悩みの方に、根拠に基づいた治療をご提案できるよう努めています。気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。
【痛風・高尿酸血症外来のご案内】
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