週1回インスリン「アウィクリ」とは?効果・低血糖・向いている人を糖尿病専門医が解説
インスリン治療では、これまで基礎インスリンを1日1回、製剤によっては1日2回注射する必要がありました。
「アウィクリ注フレックスタッチ」(一般名:インスリン イコデク)は、世界初の週1回投与型の基礎インスリン製剤です。日本では2024年6月に承認され、総量300単位製剤が2025年1月、総量700単位製剤が同年12月に発売されました。
毎日の注射負担を大きく減らせる一方、投与量をその日の状態に合わせて細かく変更しにくいことや、低血糖が長引く可能性など、週1回製剤ならではの注意点もあります。
この記事では、アウィクリの効果、毎日型インスリンとの違い、低血糖、向いている人、使用時の注意点について、糖尿病専門医が解説します。
目次(押すと目次が出ます)
アウィクリとは?
アウィクリは、1週間に1回皮下注射する「基礎インスリン」です。
私たちの体では、食事をしていない時間にも肝臓から糖が供給されています。この糖によって血糖値が上がりすぎないよう、膵臓からは少量のインスリンが絶えず分泌されています。これを「基礎分泌」と呼びます。
一方、食事による血糖上昇に合わせて分泌されるインスリンが「追加分泌」です。

アウィクリは血液中のアルブミンと結合し、そこから少しずつ離れて作用することで、血糖を下げる効果が約1週間持続します。

糖尿病の治療で使われる薬全体の中での位置づけについては、「糖尿病の薬には何がある?種類・効果・副作用と選び方を専門医が解説」で解説しています。
週1回になるのは「基礎インスリン」だけ

アウィクリに変更すると、すべてのインスリン注射が週1回になるわけではありません。
アウィクリが置き換えるのは、1日を通して血糖値を支える基礎インスリンです。食事のたびに超速効型インスリンを使用している方は、アウィクリに変更した後も食前の注射が必要です。
例えば、毎日1回の基礎インスリンと毎食前3回の超速効型インスリンを使用している場合、アウィクリへの変更によって週1回になるのは基礎インスリンの部分です。
「インスリン注射がすべて週1回になる薬」ではない点に注意しましょう。
食前に使う超速効型インスリンについては、「フィアスプとルムジェブの違いは?効き始めの速さ・注射するタイミングを比較」で解説しています。
毎日型の基礎インスリンと何が違う?
アウィクリの最大の特徴は、基礎インスリンの注射回数を大幅に減らせることです。1日1回の基礎インスリンと比べると、年間の注射回数は約365回から約52回になります。
一方、毎日型のインスリンには、その日の食事量、運動量、体調などに応じて投与量を調整しやすいという利点があります。
| アウィクリ | 毎日型の基礎インスリン | |
|---|---|---|
| 注射回数 | 週1回 | 通常1日1回 |
| 投与量の調整 | 原則として週単位 | アウィクリより短い間隔で調整しやすい |
| 主な利点 | 注射回数を減らせる | 生活や体調の変化に対応しやすい |
| 主な注意点 | 低血糖が長引く可能性がある | 毎日の注射管理が必要 |
| 向いている生活 | 比較的安定した生活 | 食事量や活動量が変化しやすい生活にも対応しやすい |
週1回だから一律に優れているのではなく、生活リズムや血糖変動、低血糖のリスクに合わせて使い分ける薬です。
アウィクリの効果は毎日型と比べてどうか
アウィクリの有効性と安全性は、ONWARDSと呼ばれる複数の国際共同臨床試験で検討されています。
インスリン治療を受けたことのない2型糖尿病患者984人を対象としたONWARDS 1試験では、アウィクリ週1回投与とインスリン グラルギン1日1回投与が比較されました。
52週間後のHbA1cの変化は、次のとおりでした。

アウィクリは、毎日型の基礎インスリンに劣らない血糖改善効果を示し、この試験ではHbA1cの低下量が統計学的にわずかに上回りました。
ただし、両群の差は0.19ポイントです。アウィクリの最大の特徴は、血糖値を特別強く下げることよりも、毎日型と同程度の血糖管理を目指しながら注射回数を減らせることにあります。
日本人が参加したONWARDS 1、2、4試験の解析でも、アウィクリと毎日型の基礎インスリンでHbA1cの改善はおおむね同程度でした。
アウィクリのメリット
最も大きなメリットは、注射回数を減らせることです。
実際に当院でも、アウィクリへの変更後に「毎日打たなくてよいので楽になった」と話される患者さんが少なくありません。
毎日の注射を負担に感じている方や、基礎インスリンを打ち忘れることがある方では、治療を続けやすくなる可能性があります。家族や介護者、訪問看護師などが注射を支援している場合も、管理の負担を減らせることがあります。
毎週同じ曜日に注射しますが、必ずしも毎回まったく同じ時刻である必要はありません。生活の中で忘れにくい曜日を決めておくと管理しやすくなります。
ただし、毎日の注射を忘れやすい方が、必ずしも週1回なら安全に管理できるとは限りません。前回の注射日が分からなくなり、重ねて投与してしまう危険もあるため、カレンダーや記録表、スマートフォンの通知などを活用することが大切です。
低血糖には注意が必要
アウィクリでも、ほかのインスリン製剤と同様に低血糖を起こすことがあります。
主な症状は、冷や汗、手の震え、動悸、強い空腹感、頭痛、ふらつき、集中力の低下などです。症状がある場合は、ブドウ糖などを摂取して対応します。
アウィクリは作用が長いため、いったん低血糖から回復しても再び血糖値が下がる可能性があります。臨床試験では、低血糖は注射後2〜4日目に多く認められました。

特に1型糖尿病患者を対象としたONWARDS 6試験では、HbA1cの改善効果は毎日投与するインスリン デグルデクと同程度でしたが、臨床的に問題となる低血糖または重い低血糖の発生回数はアウィクリ群で多くなりました。
そのため、1型糖尿病でも日本では使用できますが、毎日型の基礎インスリンを続ける場合と比較したうえで、慎重に選択する必要があります。
低血糖の症状や対処法については、「【糖尿病専門医が解説】低血糖の症状・原因・検査・対処法」で詳しく解説しています。
アウィクリが向いている人・慎重に検討する人

アウィクリが治療の選択肢になりやすいのは、生活リズムと血糖値が比較的安定しており、毎日の基礎インスリン注射を負担に感じている方です。
| 選択肢になりやすい人 | 慎重に検討する人 |
|---|---|
| 毎日の基礎インスリン注射が負担になっている | 低血糖を繰り返している |
| 基礎インスリンを打ち忘れることがある | 血糖値の変動が大きい |
| 食事量や生活リズムが比較的安定している | 食事量が日によって大きく変わる |
| 血糖値の変動が比較的小さい | 激しい運動、登山、マラソンなどを行う |
| 家族や医療・介護スタッフが注射を支援している | 断食などを定期的に行う |
| 注射日を確実に管理できる | 注射した日を忘れて重ねて投与するおそれがある |
| 1型糖尿病、重い腎機能・肝機能障害がある |
高齢の方では、週1回にすることで本人や家族の負担を減らせることがあります。その一方で、認知機能や視力、手指の動きに問題がある場合は、投与曜日や単位数を間違えない仕組みが必要です。
小児を対象とした臨床試験は行われていません。妊娠中の使用についても十分な臨床試験成績がないため、個別の判断が必要です。
毎日型の基礎インスリンから切り替える方法
毎日型の基礎インスリンからアウィクリへ切り替える場合、通常はそれまでの基礎インスリン1日量の7倍を、週1回量の目安とします。
例えば1日10単位を使用していた場合、週1回70単位が一つの目安になります。ただし、初回投与量の設定には、現在の血糖値、低血糖歴、併用薬、腎機能なども影響します。
電子添文では、切り替え時の高血糖を防ぐため、2型糖尿病では初回のみ1.5倍量を投与することが推奨されています。ただし、必ず1.5倍にするわけではなく、低血糖のリスクとのバランスを踏まえて判断します。
私は血糖コントロールが安定しており、低血糖を避けたい患者さんでは、一時的に血糖値が上がる可能性を説明したうえで、初回から従来の基礎インスリン1日量の7倍で開始することも少なくありません。作用時間の長いアウィクリでは、投与量が多すぎた場合に低血糖が遷延する可能性があるためです。
アウィクリは半減期が約1週間と長く、初回投与量を増量しなかった2型糖尿病患者では、血中濃度が安定するまで3〜4週間かかります。投与量を変更しても効果をすぐに判断できないため、毎日注射するタイプのインスリンと同じ感覚で短期間に増減しないことが重要です。
なお、この計算は患者さん自身で行うものではありません。切り替えと用量調整は、必ず医師の指示に従ってください。
注射するときの注意点
アウィクリは毎週同じ曜日に注射します。やむを得ず曜日を変更するときは、前回の注射から4日以上の間隔をあけます。
アウィクリの濃度は700単位/mLで、注入器の1目盛りは10単位です。通常のインスリン製剤とは濃度や目盛りが異なるため、ほかのインスリンと取り違えないよう、注射前に製品名、投与曜日、単位数を毎回確認してください。
アウィクリを誤って毎日注射したり、必要量より多く投与したりすると、重い低血糖につながるおそれがあります。自己判断で投与回数や単位数を変更してはいけません。
注射した日と単位数を、記録表やスマートフォンに残しておくことをおすすめします。家族や医療・介護スタッフが関わる場合は、誰がいつ注射したかを共有できる方法を決めておきましょう。
注射する場所や手順、保管方法については、「インスリン注射の正しい打ち方|場所・手順・保管方法をわかりやすく解説」をご覧ください。
注射を打ち忘れた場合はどうする?
電子添文では、注射を忘れた場合は気づいた時点で投与し、次の投与まで4日以上あけることとされています。その後は、新しく注射した曜日を基準に週1回投与を続けます。

ただし、前回いつ注射したか分からない場合や、4日以上あいているか判断できない場合は、自己判断で追加せず、医療機関へ確認してください。
また、注射を忘れた後は血糖値が上昇する可能性があります。医師から血糖測定について指示を受けている場合は、いつもより注意して確認します。
その他の副作用
低血糖以外では、注射部位の赤み、腫れ、かゆみなどが起こることがあります。脂肪が硬くなった部位に繰り返し注射すると、インスリンの吸収が不安定になるため、注射場所は毎回少しずつずらしてください。
そのほか、体重増加やむくみがみられることがあります。
重い低血糖を起こした場合や、低血糖を繰り返す場合は、次の注射を自己判断で調整せず、医療機関へ相談してください。
アウィクリの費用
アウィクリは、インスリン療法が必要な糖尿病に対して保険が適用されます。
2026年9月時点の薬価は、総量300単位が1本2,081円、総量700単位が1本3,809円です。実際の自己負担額は、使用する規格、週1回の投与量、保険の負担割合、診察や検査の内容によって異なります。
個人的には単位あたりの単価の安い700単位を処方していることが多いです。
アウィクリは「便利だから全員に向く薬」ではありません
アウィクリは、毎日の基礎インスリン注射を週1回に減らせる画期的な薬です。注射の負担を減らし、治療を続けやすくする選択肢として期待されています。
一方で、食事量、運動量、体調が大きく変わる方では、毎日型インスリンの方が調整しやすいことがあります。低血糖を繰り返している方や血糖変動が大きい方では、週1回という特徴がかえって不利になる場合もあります。
当院では、現在のインスリン投与量、HbA1c、血糖変動、低血糖の頻度、腎機能、生活リズム、注射の負担などを確認し、毎日型インスリンを続ける場合と比較しながら治療をご提案します。
アウィクリへの変更を希望される方や、自分に向いているか知りたい方は、糖尿病内科でご相談ください。
まとめ
アウィクリは、週1回投与する基礎インスリンです。毎日型の基礎インスリンと同程度の血糖改善効果が期待でき、注射回数を大きく減らせます。
ただし、食事前のインスリンまで週1回になるわけではありません。また、作用が長いため、低血糖が長引いたり、投与間違いによって重い低血糖を起こしたりする可能性があります。
週1回という利便性だけで選ぶのではなく、血糖値の安定性、低血糖のリスク、生活リズム、注射の管理方法を考慮し、自分に合った基礎インスリンを選ぶことが大切です。
参考文献
- アウィクリ注フレックスタッチ 電子添文|医薬品医療機器総合機構(PMDA)
- アウィクリ注 適正使用ガイド|医薬品医療機器総合機構(PMDA)
- Rosenstock J, et al. Weekly Icodec versus Daily Glargine U100 in Type 2 Diabetes without Previous Insulin(ONWARDS 1). N Engl J Med. 2023;389:297-308.
- Philis-Tsimikas A, et al. Switching to once-weekly insulin icodec versus once-daily insulin degludec in individuals with basal insulin-treated type 2 diabetes(ONWARDS 2). Lancet Diabetes Endocrinol. 2023;11:414-425.
- Lingvay I, et al. Once-Weekly Insulin Icodec vs Once-Daily Insulin Degludec in Adults With Insulin-Naive Type 2 Diabetes(ONWARDS 3). JAMA. 2023;330:228-237.
- Mathieu C, et al. Switching to once-weekly insulin icodec versus once-daily insulin glargine U100 in individuals with basal-bolus insulin-treated type 2 diabetes(ONWARDS 4). Lancet. 2023;401:1929-1940.
- Bajaj HS, et al. Once-Weekly Insulin Icodec With Dosing Guide App Versus Once-Daily Basal Insulin Analogues in Insulin-Naive Type 2 Diabetes(ONWARDS 5). Ann Intern Med. 2023;176:1476-1485.
- Russell-Jones D, et al. Once-weekly insulin icodec versus once-daily insulin degludec as part of a basal-bolus regimen in individuals with type 1 diabetes(ONWARDS 6). Lancet. 2023;402:1636-1647.
- Watada H, et al. Efficacy and safety of once-weekly insulin icodec versus once-daily basal insulin in Japanese individuals with type 2 diabetes. Diabetes Obes Metab. 2024;26:5882-5895.
- 週1回投与のアウィクリ注 国内発売のお知らせ|ノボ ノルディスク ファーマ
この記事の執筆・監修者

乾 恵輔(いぬい けいすけ) 乾小児科内科医院 院長
【保有資格】
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
- 日本循環器学会認定 循環器専門医
- 日本内科学会認定 総合内科専門医
院長よりメッセージ: 週1回のインスリンは、毎日の注射が負担になっている方にとって大きな選択肢です。ただ、誰にでも向くわけではなく、血糖の振れ幅や低血糖の起こりやすさによっては毎日タイプの方が安全なこともあります。気になる方は一度ご相談ください。
【糖尿病内科のご案内】
インスリン治療を続けている方、毎日の注射を負担に感じている方、週1回インスリンへの変更を検討したい方は、当院の糖尿病内科へご相談ください。血糖の状態や生活リズムをうかがったうえで、続けやすい治療を一緒に考えます。
受診をご希望の方は、WEB事前受付をご利用いただくとスムーズです。当日、症状について確認したいことがある場合は、お電話でもお問い合わせいただけます。



© Inui pediatrics and internal medicine clinic

