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家族性高コレステロール血症(FH)とは?LDLコレステロール180以上で疑う理由と治療 

2026/09/19
家族性高コレステロール血症(FH)とは。健康診断結果のLDLコレステロール180mg/dL以上の数値を見て悩む男性と家族のイラスト

健康診断でLDLコレステロールが高いと、「食べすぎや運動不足が原因だろう」と考える方が多いかもしれません。しかし、体型や生活習慣にかかわらず、若いころからLDLコレステロールが高い方もいます。

このような場合に考えたいのが、家族性高コレステロール血症(FH)です。

FHは、生まれつきLDLコレステロールが高くなりやすい遺伝性の病気です。15歳以上で、未治療のLDLコレステロールが180mg/dL以上ある方、家族に若くして心筋梗塞や狭心症を発症した方がいる場合は、FHが隠れていないか確認する必要があります。

この記事では、FHの特徴、診断基準、治療、家族の検査について循環器専門医が解説します。

目次(押すと目次が出ます)

家族性高コレステロール血症(FH)とは

家族性高コレステロール血症は、英語の「Familial Hypercholesterolemia」を略してFHと呼ばれます。

血液中のLDLコレステロールは、主に肝臓にあるLDL受容体を介して取り込まれ、処理されます。FHでは、LDL受容体やLDLの代謝に関係する遺伝子に変化があるため、血液中のLDLコレステロールが十分に処理されず、高い状態が続きます。

FHの大きな特徴は、成人してからLDLコレステロールが上がるのではなく、生まれたときから高い状態が続くことです。そのため、同じ検査値でも、一般的な脂質異常症より長い期間にわたって血管が高いLDLコレステロールにさらされます。

家族性高コレステロール血症(FH)では生まれたときからLDLコレステロールが高く、出生から小児期・成人期まで高値が続いて血管への影響が蓄積することを示した図

治療せずにいると若い年代から動脈硬化が進み、とくに心臓を栄養する冠動脈が狭くなる狭心症や、冠動脈が詰まる心筋梗塞を発症しやすくなります。

一方、早く診断し、LDLコレステロールを適切に下げることで、冠動脈疾患の発症を遅らせ、将来のリスクを減らすことができます。コレステロールの基本的な考え方はコレステロールが高いと言われたら?数値を下げる方法は?でも解説しています。

FHは約300人に1人と、決してまれではありません

以前は、FHヘテロ接合体は約500人に1人と考えられていました。現在は国内外の研究から、一般人口のおよそ300人に1人がFHと推定されています。

日本全体で考えると多くの患者さんがいることになりますが、LDLコレステロールが高くても症状が出ないため、FHと気づかないまま過ごしている方も少なくありません。

FHには、片方の親から遺伝子の変化を受け継ぐ「ヘテロ接合体」と、両方の親から受け継ぐ「ホモ接合体」があります。患者さんの多くはヘテロ接合体です。ホモ接合体は非常にまれですが、LDLコレステロールが著しく高く、小児期から動脈硬化が進むため、専門医療機関での治療が必要です。

FHを疑う主なサイン

次のような特徴がある場合は、FHの可能性を考えます。

  • 15歳以上で、未治療のLDLコレステロールが180mg/dL以上ある
  • 体型や生活習慣にかかわらず、若いころからLDLコレステロールが高い
  • 親・きょうだい・子どもにFHの方がいる
  • 家族に若くして狭心症や心筋梗塞を発症した方がいる
  • アキレス腱が厚い、手の甲・肘・膝などに黄色腫がある

LDLコレステロールが180mg/dL以上だからといって、それだけで全員がFHと診断されるわけではありません。ただし、FHを見逃さないための重要な目安です。過去の健康診断でも高値が続いている場合は、一度医療機関で評価を受けましょう。健診で指摘されたときの受診先については健康診断で引っかかったら何科?もご覧ください。

成人の家族性高コレステロール血症の診断基準

成人では、ほかの病気や薬剤などによる脂質異常症を除外したうえで、次の3項目を確認します。

診断項目内容
高LDLコレステロール血症未治療時のLDLコレステロールが180mg/dL以上
黄色腫腱黄色腫、アキレス腱肥厚、または皮膚結節性黄色腫
家族歴第一度近親者にFH、または早発性冠動脈疾患がある

3項目のうち2項目以上を満たす場合にFHと診断します。

第一度近親者とは、親・きょうだい・子どものことです。早発性冠動脈疾患は、男性では55歳未満、女性では65歳未満で発症した狭心症や心筋梗塞などを指します。

すでにコレステロールを下げる薬を服用している場合は、治療開始前や治療のきっかけになったときのLDLコレステロール値を参考にします。

2項目を満たさなくても、未治療のLDLコレステロールが250mg/dL以上の場合や、黄色腫または家族歴がありLDLコレステロールが160mg/dL以上の場合は、FHを強く疑います。

FHは、LDLコレステロール値、家族歴、アキレス腱などの所見から診断できることが多く、すべての方に遺伝学的検査が必要なわけではありません。診断が難しい場合や重症例が疑われる場合には、遺伝学的検査や専門医への紹介を検討します。

診察では、現在と過去のLDLコレステロール値、家族のコレステロール値や心臓病を発症した年齢を確認し、アキレス腱などを診察します。必要に応じて血液検査、アキレス腱のX線検査や超音波検査を行います。

15歳未満の子どもは小児用の診断基準で評価します

上記の成人用診断基準は15歳以上が対象で、15歳未満の子どもには小児用の診断基準を用います。小児FHヘテロ接合体では、腱黄色腫やアキレス腱肥厚が通常みられないため、主にLDLコレステロール値と家族歴をもとに判断します。

小児用の診断基準では、次の3項目を確認します。

診断項目内容
高LDLコレステロール血症未治療時のLDLコレステロールが140mg/dL以上(複数回確認)
FHの家族歴親またはきょうだいにFHがある
家族の情報親のLDLコレステロールが180mg/dL以上、または祖父母・親に早発性冠動脈疾患の家族歴がある

ほかの病気による高LDLコレステロール血症を除外したうえで、未治療のLDLコレステロールが140mg/dL以上で、親またはきょうだいにFHがあれば小児FHと診断します。また、LDLコレステロールが180mg/dL以上で表の「家族の情報」に該当する場合や、250mg/dL以上の場合もFHと診断します。

LDLコレステロールが180mg/dL以上でも診断条件を満たさない場合は、「FH疑い」として詳しい確認と経過観察を行います。遺伝学的検査でFHの原因となる遺伝子変異が確認された場合は、LDLコレステロール値や家族歴にかかわらずFHと診断します。

アキレス腱の肥厚や黄色腫も手がかりになります

FHでは、余分なコレステロールが腱や皮膚にたまり、アキレス腱が厚くなったり、手の甲・肘・膝などに黄色みを帯びた隆起ができたりすることがあります。

アキレス腱の肥厚は、触診に加えてX線検査や超音波検査で評価します。現在の基準では、X線で男性8.0mm以上・女性7.5mm以上、超音波で男性6.0mm以上・女性5.5mm以上がアキレス腱肥厚とされます。

まぶたにできる眼瞼黄色腫もFHを疑うきっかけにはなりますが、ほかの方にもみられるため、それだけでは診断項目になりません。また、黄色腫がないFHの方もいるため、見た目に異常がないことだけではFHを否定できません。

FHでは生活習慣だけでなく薬による治療が重要です

FHの治療目的は、LDLコレステロールを下げ、将来の狭心症や心筋梗塞を防ぐことです。

食事、運動、適正体重の維持、禁煙はFHでも重要です。ただし、FHは遺伝的な原因によってLDLコレステロールが高くなるため、生活習慣の改善だけでは十分に下がらないことが多く、生活習慣の見直しと並行して薬物治療を行います。

薬物治療ではスタチンが中心となります。薬の効果や副作用を確認しながら、種類や量を調整します。スタチンだけで目標に届かない場合はエゼチミブなどを追加し、それでも不十分な場合は、LDLコレステロールを強力に下げる注射薬(PCSK9阻害薬など)を検討します。

成人FHヘテロ接合体のLDLコレステロール管理目標は、冠動脈疾患を発症していない一次予防では100mg/dL未満、すでに冠動脈疾患がある二次予防では70mg/dL未満です。実際の治療内容は、年齢、治療前のLDLコレステロール値、ほかの病気、薬の効果などを踏まえて決めます。

小児では、食事を含む生活習慣を整えながら経過をみます。LDLコレステロールが180mg/dL以上の状態が続く場合は、10歳ごろを目安に薬物療法を検討し、140mg/dL未満を管理目標とします。

ホモ接合体や、複数の薬を使用してもLDLコレステロールが十分に下がらない重症例では、専門医療機関でLDLアフェレシスなどを行うことがあります。

FHと診断されたら家族も検査を受けましょう

FHの多くは、親から子へ伝わる遺伝形式をとります。親の一方がFHヘテロ接合体の場合、子どもがFHを受け継ぐ確率は、男女を問わず1人につき50%です。これを常染色体顕性遺伝と呼びます。

家族性高コレステロール血症(FH)の遺伝と家族の検査。親の一方がFHの場合、子ども1人につき50%の確率で受け継ぎ、親・きょうだい・子どももLDLコレステロールを検査することを示した家系図

そのため、本人がFHと診断されたら、親・きょうだい・子どもにもLDLコレステロールの検査を勧めます。ひとりの診断をきっかけに血縁者を調べ、まだ症状のないFHを早期に発見する方法を「カスケードスクリーニング」と呼びます。

子どものFHも通常は症状がありません。しかし、LDLコレステロールが高い状態は子どものころから続くため、早期に見つけて継続的に管理することが大切です。

このような方は循環器内科へご相談ください

健康診断でLDLコレステロールの高値を指摘され、ここまで説明した特徴に当てはまる方は、一度循環器内科へご相談ください。コレステロールの薬を飲んでも十分に下がらない場合も、治療内容を見直す必要があります。

受診の際は、今回の健康診断結果だけでなく、過去の検査結果もお持ちください。家族が心筋梗塞や狭心症を発症した年齢が分かれば、あわせて医師にお伝えください。

動脈硬化性疾患の評価では、年齢や症状に応じて心電図、心エコー、頸動脈エコーなどを行い、必要な場合は冠動脈CTなどが可能な医療機関へご紹介します。

まとめ

家族性高コレステロール血症は、生まれつきLDLコレステロールが高くなりやすい遺伝性の病気です。約300人に1人と決してまれではありませんが、自覚症状がないため、気づかれていない方も少なくありません。

FHは早く見つけて適切な治療を続けることで、将来の狭心症や心筋梗塞のリスクを減らせます。本人の診断をきっかけに、親・きょうだい・子どもの早期発見にもつなげることが大切です。

参考文献


この記事の執筆・監修者

高崎市の乾小児科内科医院 院長 乾恵輔

乾 恵輔(いぬい けいすけ) 乾小児科内科医院 院長

【保有資格】

  • 日本循環器学会認定 循環器専門医
  • 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
  • 日本内科学会認定 総合内科専門医

院長よりメッセージ: 「家族もコレステロールが高いんです」というお話は、外来でよく伺います。体型や生活習慣で説明がつかない高値が続く場合は、FHを念頭に置いて調べる価値があります。ご家族の検査値や心臓病の年齢が分かれば、ぜひ教えてください。


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LDLコレステロールの高値や家族性高コレステロール血症について、検査と治療に対応しています。過去の検査値やご家族の情報をもとに評価し、必要な方には薬物治療をご提案します。専門的な治療が必要な場合は、対応する医療機関へご紹介します。

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