スタチンとは?効果・副作用・いつまで飲むべきかを循環器専門医が解説
スタチンは、LDL(悪玉)コレステロールを下げる代表的な薬です。脂質異常症の治療で広く使われていますが、診察室では次のような質問をされます。
「一度飲み始めたら、一生続けないといけないの?」
「筋肉が壊れる副作用があると聞いたけれど大丈夫?」
「コレステロールが下がったら、薬をやめてもいい?」
スタチン治療の目的は、検査結果の数字だけを下げることではありません。LDLコレステロールを下げて動脈硬化の進行を抑え、将来の心筋梗塞や脳梗塞を防ぐことが本当の目的です。
この記事では、スタチンの効果や種類、薬の使い分け、副作用、治療を続ける期間について、循環器専門医が分かりやすく解説します。コレステロールの数値そのものについてはコレステロールが高いと言われたら|LDLを下げる食事・運動・薬もご覧ください。
目次(押すと目次が出ます)
この記事のポイント
- スタチンはLDLコレステロールを下げ、心筋梗塞や脳梗塞を予防する代表的な薬です
- 筋肉症状などの副作用はありますが、重篤な横紋筋融解症はまれです
- LDLが下がっていても自己判断で中止せず、心血管リスクを踏まえて主治医と相談することが大切です
1.スタチンとは
血液中のLDLコレステロールが高い状態が続くと、血管の壁にコレステロールなどがたまり、「プラーク」と呼ばれる病変が形成されます。これは、心筋梗塞や脳梗塞の原因となる粥状動脈硬化の重要な変化です。
スタチンはLDLコレステロールを低下させ、動脈硬化性疾患を予防するために使われます。多くの研究から、LDLコレステロールをしっかり下げることで、心筋梗塞や脳梗塞などの発症を減らせることが分かっています。
ただし、治療の目標は全員同じではありません。
年齢、高血圧、糖尿病、喫煙、腎臓病、家族歴に加えて、すでに心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などを起こしたことがあるかによって、将来のリスクは大きく異なります。そのため、同じLDLコレステロール値でも、生活習慣の改善を中心に経過を見る方もいれば、早い段階から薬物治療を始めた方がよい方もいます。
つまり、スタチンは単に「検査値を正常範囲にする薬」ではなく、将来の心筋梗塞や脳梗塞を防ぐための薬と考えることが大切です。
2.スタチンがLDLコレステロールを下げる仕組み
コレステロールというと、「食事でとった脂が、そのまま血液中のコレステロールになる」と思われるかもしれません。
しかし、体内のコレステロールの多くは肝臓などで作られています。スタチンは、肝臓でコレステロールを作るときに必要なHMG-CoA還元酵素の働きを抑えます。
肝臓内のコレステロールが減ると、肝臓は不足分を補うため、血液中からLDLコレステロールをより多く取り込むようになります。その結果、血液中のLDLコレステロールが低下します。
仕組みを細かく覚える必要はありません。「スタチンは肝臓でコレステロールが作られるのを抑え、血液中のLDLを減らす薬」と理解していただければ十分です。
3.スタチンの種類と使い分け
日本で使用されているスタチンは、一般的にLDLコレステロールを下げる作用の強さによって、「スタンダードスタチン」と「ストロングスタチン」に分けられます。
| 分類 | 一般名 | 主な商品名 |
|---|---|---|
| スタンダードスタチン | プラバスタチン | メバロチン |
| スタンダードスタチン | シンバスタチン | リポバス |
| スタンダードスタチン | フルバスタチン | ローコール |
| ストロングスタチン | ロスバスタチン | クレストール |
| ストロングスタチン | ピタバスタチン | リバロ |
| ストロングスタチン | アトルバスタチン | リピトール |
ストロングスタチンは、一般にLDLコレステロールを下げる作用が強く、現在の診療でもよく使用されています。ただし、「作用が強い薬ほど優れている」というわけではありません。
どの程度LDLコレステロールを下げる必要があるかは、その方の心筋梗塞や脳梗塞のリスクによって異なります。また、腎機能や肝機能、併用している薬、これまでに副作用が出たことがあるかなども薬を選ぶうえで重要です。
必要な効果と安全性のバランスを考え、薬の種類と量を決めます。
4.増量とほかの薬との併用
スタチンを2倍にしても効果は2倍にならない
「LDLコレステロールが十分に下がらなければ、薬をどんどん増やせばよいのでは?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、スタチンには、投与量を2倍にしてもLDLコレステロールの低下率は約6ポイントしか上乗せされないという特徴があります。これは一般に「6%ルール」と呼ばれています。
例えば、ある用量で治療前よりLDLコレステロールが約30%下がる薬を2倍量にしても、低下率が約60%になるわけではなく、おおむね約36%になるという考え方です。実際の効果には個人差があり、薬の種類や用量によっても異なります。

十分に下がらない場合は作用の異なる薬を組み合わせる
スタチンを増量しても目標に届かない場合には、作用の異なる薬を組み合わせる方法があります。代表的なのがエゼチミブ(商品名:ゼチーア)です。
スタチンが肝臓でのコレステロール合成を抑えるのに対し、エゼチミブは小腸からのコレステロール吸収を抑えます。食事だけでなく、胆汁に含まれて小腸へ排泄されたコレステロールの再吸収も抑える薬です。
この2つを組み合わせることで、異なる方向からLDLコレステロールを下げられます。

現在は、アトルバスタチンとエゼチミブを組み合わせたアトーゼット配合錠や、ロスバスタチンとエゼチミブを組み合わせたロスーゼット配合錠もあります。
さらに、家族性高コレステロール血症や心血管リスクが特に高い方などでは、スタチンとエゼチミブを併用しても十分に下がらず、PCSK9阻害薬などを検討する場合があります。こうした治療は適応を確認しながら、専門的に判断します。家族性高コレステロール血症については家族性高コレステロール血症(FH)とは?で解説しています。
高血圧を合併している方では、血圧の薬であるアムロジピンとアトルバスタチンを1錠にまとめた配合剤を使うこともあります。薬の数を減らし、飲み忘れを防ぎやすくすることが目的です。
5.スタチンの副作用と症状が出たときの対応
スタチンについて調べると、「筋肉が壊れる」「飲み続けるのは危険」といった情報を目にして、不安になる方もいると思います。
どの薬にも副作用はありますが、副作用の可能性だけでなく、スタチンによって心筋梗塞や脳梗塞を防げるメリットと合わせて考えることが重要です。
筋肉に関連する症状
スタチンで知られている副作用のひとつが、筋肉に関連する症状です。服用中に、原因のはっきりしない筋肉痛、筋力低下、強いだるさなどがみられることがあります。血液検査では、筋肉由来の酵素であるCK(CPK)が上昇する場合があります。
ただし、スタチンを飲んでいるときに筋肉痛が起きても、すべてがスタチンの副作用とは限りません。運動、けが、感染症、甲状腺の病気など、ほかの原因で筋肉痛やCK上昇が起きることもあります。
軽い筋肉痛が出ただけで、自己判断ですぐに薬を中止する必要はありません。症状が出た時期や程度を確認し、必要に応じて血液検査を行います。スタチンによる症状が疑われる場合でも、休薬、減量、別のスタチンへの変更、エゼチミブなどの併用といった対応が可能です。
強い筋肉痛や赤褐色の尿は速やかに受診を
横紋筋融解症は、骨格筋の細胞が強く障害される病気です。筋肉からミオグロビンなどが血液中へ流れ出し、重症になると急性腎障害を起こすことがあります。
横紋筋融解症では、強い筋肉痛や明らかな筋力低下、強いだるさ、赤褐色やコーラ色の尿などがみられます。このような症状がある場合は、服用を中止して速やかに医療機関を受診してください。
一方、軽い筋肉痛や違和感だけの場合は、自己判断で治療を終わらせず、処方した医師へ相談してください。「筋肉痛が出たら、もうコレステロール治療ができない」ということではありません。

肝機能と血糖への影響
スタチンによって、ASTやALTなどの肝機能検査値が上昇することがあります。治療開始後は、薬の効果と安全性を確認するため、患者さんの状態に応じて脂質、肝機能、CK、腎機能などを検査します。
また、スタチンによって糖尿病を新たに発症するリスクがわずかに高くなることも報告されています。特に、もともと血糖値が高めの方や、メタボリックシンドロームなど糖尿病を発症しやすい方では、血糖値やHbA1cも確認します。
ただし、スタチン治療が必要な方では、一般に心筋梗塞や脳梗塞を予防するメリットの方が糖尿病発症リスクを上回ります。「糖尿病になるのが怖いから飲まない」と自己判断するのではなく、糖尿病と動脈硬化の両方のリスクを考えて治療を決めることが大切です。
6.飲み合わせと妊娠・授乳中の注意
スタチンは種類によって代謝経路が異なり、併用する薬によっては血液中の濃度が上がり、筋障害などの副作用が起こりやすくなる場合があります。
特に、一部の抗菌薬や抗真菌薬、免疫抑制薬、フィブラート系薬などとの併用には注意が必要です。ただし、問題となる組み合わせはスタチンの種類によって異なります。
他院で新しい薬を処方されたときや、市販薬・サプリメントを使うときは、スタチンを服用していることを医師や薬剤師へ伝えてください。お薬手帳を活用すると確認しやすくなります。
また、妊娠中、妊娠を希望している方、授乳中の方は、原則としてスタチンを使用しません。該当する方や妊娠の可能性がある方は、自己判断で続けたり中止したりせず、早めに処方した医師へ相談してください。
7.スタチンはいつまで続ける?
「スタチンを飲み始めたら、全員が必ず一生飲まなければならない」というわけではありません。
一方で、薬を飲んでLDLコレステロールが目標値まで下がったとしても、それだけで治療が終了するわけではありません。薬によってLDLコレステロールが下がっている場合、中止すれば再び上昇する可能性があります。
食生活や運動習慣、体重、喫煙などが改善し、LDLコレステロールだけでなく全体の心血管リスクが下がれば、薬の量や種類を見直せる場合はあります。ただし、生活習慣が改善したからといって、必ず薬を中止できるわけではありません。
特に、心筋梗塞や狭心症を起こしたことがある方、糖尿病や慢性腎臓病などがあり心血管リスクが高い方、LDLコレステロールが非常に高い方、家族性高コレステロール血症が疑われる方では、長期的にLDLコレステロールを低く保つことが重要です。
薬を続けるか、減らすか、中止できるかは、その時点のLDL値だけではなく、年齢、生活習慣、合併症、これまでの病歴を含めて判断します。
薬を減らしたい、あるいは中止したいと考えている場合は、まず主治医へ相談し、現在の治療が自分にとってどのような意味を持つのか確認しましょう。
8.まとめ
スタチンはLDLコレステロールを下げ、将来の心筋梗塞や脳梗塞を防ぐための代表的な薬です。必要な薬の種類や強さは、LDL値だけではなく、年齢、高血圧、糖尿病、喫煙、腎機能、心血管疾患の既往などを踏まえて決まります。
筋肉症状などが出た場合も、減量や薬の変更、エゼチミブなどとの併用によって治療を続けられることがあります。LDLが下がっていても自己判断で中止せず、現在の治療を続ける意味を主治医と確認しましょう。
参考文献
- 日本動脈硬化学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版.
- Baigent C, et al. Efficacy and safety of more intensive lowering of LDL cholesterol: a meta-analysis of data from 170,000 participants in 26 randomised trials. Lancet. 2010;376:1670-1681.
- Sattar N, et al. Statins and risk of incident diabetes: a collaborative meta-analysis of randomised statin trials. Lancet. 2010;375:735-742.
この記事の執筆・監修者

乾 恵輔(いぬい けいすけ) 乾小児科内科医院 院長
【保有資格】
- 日本循環器学会認定 循環器専門医
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
- 日本内科学会認定 総合内科専門医
院長よりメッセージ: 脂質異常症の治療では、コレステロール値だけでなく、糖尿病、高血圧、喫煙歴、腎機能などを含めて将来のリスクを考えることが大切です。「薬を飲み続けるのが不安」「副作用が心配」「コレステロールが下がったので薬をやめたい」といった疑問がある方も、お気軽にご相談ください。
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