糖尿病は遺伝する?親が糖尿病の人の発症リスクと今からできること
糖尿病外来をやっていると患者さんから「親が糖尿病なのですが私は糖尿病になるのでしょうか?心配です」といった質問を受けることがあります。
結論からいうと、親が糖尿病でも、子どもが必ず糖尿病になるわけではありません。ただし、特に2型糖尿病では、糖尿病になりやすい体質が家族内で受け継がれるため、家族歴のない人より発症リスクは高くなります。
糖尿病にはいくつかの種類があり、特に家族歴の影響が大きいのは2型糖尿病です。この記事では、親が糖尿病の場合に発症リスクがどのくらい高くなるのか、どのような検査を受ければよいのかについて、糖尿病専門医が解説します。
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親が糖尿病なら、まず確認したい3つのこと
親が糖尿病と分かったら、まず次の3点を確認しましょう。
- 親の糖尿病が1型か2型か
- 自分の健診結果で血糖値やHbA1cが高くないか
- 高血圧、脂質異常症、体重増加、妊娠糖尿病歴などがないか

親の糖尿病の種類によって、遺伝との関係や発症の仕組みは異なります。また、家族歴にほかのリスクが重なると、2型糖尿病を発症しやすくなります。
親が2型糖尿病だと発症リスクはどのくらい上がる?
糖尿病の大部分を占めるのが2型糖尿病です。親や兄弟姉妹に2型糖尿病の人がいる場合は、家族歴のない人より発症リスクが高くなります。
欧州で行われた大規模研究「EPIC-InterAct研究」では、2型糖尿病の家族歴がある人は、家族歴のない人に比べて発症リスクが約2.7倍、両親とも2型糖尿病の場合は約5.1倍でした。

同研究では、親が50歳未満で糖尿病と診断されている場合、家族歴との関連がより強いことも報告されています。
ただし、これらは集団同士を比較した相対的な数字です。研究対象や年齢、人種などによって結果は異なり、日本人一人ひとりの発症確率をそのまま示すものではありません。
遺伝するのは糖尿病そのものではなく「なりやすさ」
一般的な2型糖尿病は、ひとつの遺伝子だけで発症が決まる病気ではありません。親から子へ受け継がれるのは、糖尿病そのものというより、インスリンを分泌する力やインスリンの効きやすさなど、糖尿病になりやすい体質です。

血糖値を下げるホルモンであるインスリンが十分に分泌されないことや、インスリンが効きにくくなることによって血糖値が上がります。日本人では、体重がそれほど多くなくてもインスリンを十分に分泌できず、2型糖尿病を発症する人がいます。
これまでの遺伝子研究では、2型糖尿病に関係する多数の遺伝子領域が見つかっています。日本人を対象とした大規模研究でも、インスリン分泌や膵臓のβ細胞に関係するものを含め、複数の遺伝子領域が報告されました。
ただし、一つひとつの遺伝子変異による影響は限られています。複数の遺伝的要因に、加齢、体重、食事、身体活動、睡眠などが重なって2型糖尿病を発症します。家族は体質だけでなく生活環境も共有しやすいため、家族内に糖尿病の人が多くなることがあります。
そのため、一般的な2型糖尿病の発症リスクを調べる目的で、遺伝子検査を行うことは通常ありません。家族歴とともに、年齢、体格、血圧、血液検査などを総合して判断します。
1型糖尿病にも遺伝的ななりやすさがある
1型糖尿病は、免疫の仕組みが自分の膵臓にある、インスリンをつくるβ細胞を攻撃し、インスリンをほとんど分泌できなくなる病気です。2型糖尿病とは発症の仕組みが異なります。
1型糖尿病にも遺伝的ななりやすさがあります。日本人を対象とした調査では、1型糖尿病患者の兄弟姉妹における有病率は、一般人口より数十倍高いことが報告されています。特にHLAと呼ばれる免疫に関係する遺伝子領域が、発症のしやすさに強く関係します。
一方、日本では1型糖尿病そのものが比較的まれです。家族内での相対的なリスクは高くても、家族に1型糖尿病の人がいる人の多くが発症するわけではありません。複数の遺伝因子に、免疫反応や環境要因などが組み合わさって発症すると考えられています。
家族内に若年発症の糖尿病が多い場合
まれに、特定の遺伝子の変化が発症に強く関係する「単一遺伝子糖尿病」もあります。若い年齢で発症するMODYなどが代表的です。
親子3世代にわたって若い年齢で糖尿病を発症しているなど、一般的な2型糖尿病とは異なる家族歴がある場合は、専門医が遺伝子検査の必要性を検討します。家族に糖尿病の人がいるという理由だけで、遺伝子検査が必要になるわけではありません。
親が糖尿病の人が確認したい検査
2型糖尿病は、初期にはほとんど症状がありません。のどの渇き、尿の回数の増加、体重減少などが現れたときには、すでに血糖値がかなり高くなっていることがあります。
親や兄弟姉妹に2型糖尿病の人がいる方は、症状がなくても年に1回は健康診断を受け、血糖値とHbA1cを確認しましょう。
| 検査 | 分かること |
|---|---|
| 血糖値 | 採血した時点の血糖の状態。食事からの時間によって値が変わる |
| HbA1c | 過去1〜2か月程度の血糖状態を反映する |
血糖値とHbA1cは見ているものが異なります。どちらか一方だけでなく、両方を確認すると血糖状態を把握しやすくなります。
家族歴に加えて、体重や腹囲の増加、高血圧、脂質異常症、妊娠糖尿病歴がある方は、特に注意が必要です。健診で血糖値やHbA1cの異常を指摘された場合は、翌年まで待たずに医療機関で再検査を受けてください。健診で異常を指摘されたときの考え方は、「健康診断で血糖値・HbA1cが高いと言われたら?糖尿病専門医が解説【高崎市】」で解説しています。
食事や身体活動、体重などを見直すことで、2型糖尿病の発症リスクを下げたり、発症を遅らせたりできる可能性があります。短期間だけ厳しい食事制限や運動をするのではなく、甘い飲み物を減らす、間食を見直す、歩く時間を増やすなど、続けられる方法から始めましょう。食事と運動の具体的な進め方は、「【糖尿病専門医が解説】糖尿病の糖質制限はどこまで必要?無理なく続ける食事療法」と「【糖尿病専門医が解説】糖尿病の運動療法|歩数・時間・筋力トレーニング・食後運動の目安」をご覧ください。
やせている方でも2型糖尿病を発症することがあるため、体重だけで判断せず、血糖値とHbA1cを確認することが重要です。
糖尿病内科を受診する目安
次のような場合は、糖尿病内科へご相談ください。
- 健診で血糖値やHbA1cの異常を指摘された
- 以前から血糖値が高めだが、そのままになっている
- のどが異常に渇く、尿が増えた、理由なく体重が減った
- 両親とも糖尿病で、しばらく血糖検査を受けていない
- 若い年齢で糖尿病を発症した人が家族内に複数いる
まとめ
親が糖尿病でも、自分が必ず糖尿病になるわけではありません。しかし、特に2型糖尿病では家族歴が重要な発症リスクになります。
家族歴は変えられませんが、血糖値やHbA1cを定期的に確認し、異常があれば早めに対応することはできます。親の糖尿病の種類と自分の健診結果を確認し、今後の健康管理に役立てましょう。
参考文献
- 日本糖尿病学会 編.糖尿病診療ガイドライン2024.南江堂,2024.
- Meigs JB, Cupples LA, Wilson PWF. Parental transmission of type 2 diabetes: the Framingham Offspring Study. Diabetes. 2000;49(12):2201-2207.
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- Suzuki K, et al. Identification of 28 new susceptibility loci for type 2 diabetes in the Japanese population. Nat Genet. 2019;51(3):379-386.
- 池上博司.1型糖尿病に関する分子遺伝学的研究.糖尿病.2024;67(1):1-7.
- Knowler WC, et al. Reduction in the incidence of type 2 diabetes with lifestyle intervention or metformin. N Engl J Med. 2002;346(6):393-403.
この記事の執筆・監修者

乾 恵輔(いぬい けいすけ) 乾小児科内科医院 院長
【保有資格】
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
- 日本循環器学会認定 循環器専門医
- 日本内科学会認定 総合内科専門医
院長よりメッセージ: 家族に糖尿病の方がいると不安になりますが、体質は変えられなくても、早く見つけて早く手を打つことはできます。まずは健診の血糖値とHbA1cを確認するところから始めましょう。
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