心房細動とは?症状・原因・検査・治療を循環器専門医が解説
「健診の心電図で心房細動を指摘された」
「血圧を測ると脈がバラバラと言われた」
「最近、動悸を感じることが増えた」
このようなきっかけで「心房細動」という病名を知る方は少なくありません。
心房細動は、年齢とともに増える代表的な不整脈です。症状がほとんどないこともありますが、脳梗塞や心不全につながることがあるため、見つかった場合にはきちんと評価することが大切です。
この記事では、心房細動とはどのような病気なのか、症状や原因、検査、治療の考え方について循環器専門医がわかりやすく解説します。
目次(押すと目次が出ます)
心房細動とは?
心房細動は、心臓の上側にある「心房」で電気信号が乱れ、脈が不規則になる不整脈です。
正常な心臓では、一定のリズムで電気信号が流れ、心臓が規則正しく収縮しています。ところが心房細動になると、心房が規則正しく動けなくなり、その影響で脈も「速くなったり遅くなったりする」「間隔がバラバラになる」といった状態になります。
心房細動は年齢とともに増え、高齢になるほど多くみられます。

心房細動ではどんな症状が出る?
心房細動の症状には個人差があります。
代表的なのは、動悸、脈が飛ぶ・乱れる感じ、息切れ、胸の違和感、疲れやすさ、めまいやふらつきなどです。
一方で、心房細動があってもほとんど症状を感じない方もいます。
そのため、「健康診断の心電図で初めてわかった」「家庭血圧計で不整脈のマークが表示された」「診察で脈を取ったら不規則だった」という形で偶然見つかることもあります。
症状が軽い、あるいは症状がないからといって、必ずしも問題がないわけではありません。心房細動で特に注意したいのが、脳梗塞と心不全です。
心房細動で注意したい「脳梗塞」
心房細動では心房が規則正しく収縮しないため、心房の中で血液がよどみ、血栓ができることがあります。この血栓が心臓から流れ出し、脳の血管を詰まらせると脳梗塞を起こします。

ただし、心房細動がある方全員が同じように脳梗塞を起こしやすいわけではありません。
脳梗塞の危険性は、年齢、高血圧、糖尿病、心不全、過去の脳梗塞などによって異なります。そのため心房細動が見つかった場合には、症状の有無だけではなく、一人ひとりの脳梗塞リスクを評価することが重要です。
脳梗塞の危険性が高い場合には、血栓ができるのを防ぐ「抗凝固薬」を使用します。
抗凝固薬の種類や脳梗塞リスクの評価については、心房細動の治療について詳しくはこちらで解説しています。
心房細動は心不全とも関係します
心房細動では、脈が速くなりすぎたり不規則になったりすることで、心臓の働きが低下し、心不全につながることがあります。
一方で、もともと心不全がある方では心房細動も起こりやすくなります。つまり、心房細動と心不全はお互いに影響し合う関係にあります。
息切れやむくみ、体重増加などがある場合には、心房細動だけでなく心不全を合併していないか確認することも重要です。
心房細動になりやすい人は?
心房細動の最も大きな要因の一つが加齢です。年齢が上がるにつれて心房細動は増えていきます。
また、高血圧、心不全、心臓弁膜症、糖尿病、肥満、慢性腎臓病などがある方でも起こりやすくなります。睡眠時無呼吸症候群や、飲酒・喫煙といった生活習慣も心房細動と関係しています。
現在の心房細動診療では、不整脈そのものだけを見るのではなく、背景にある病気や生活習慣も一緒に管理することが重要と考えられています。
特に高血圧や睡眠時無呼吸症候群は、心房細動と深く関係しています。
心房細動はどうやって見つける?
心房細動の診断で最も重要なのは心電図です。心房細動が起きているときに心電図を記録できれば診断できます。
ただし、心房細動にはずっと続いているものだけでなく、発作的に出たり止まったりするタイプがあります。これを「発作性心房細動」といいます。
そのため、「昨晩は動悸がひどかったのに、病院に来たときには正常な脈に戻っている」ということも珍しくありません。
このような場合には、通常の心電図だけでなく、24時間以上記録するホルター心電図や、より長期間記録できる心電図検査を使って心房細動を探すことがあります。
症状がどのくらいの頻度で起きるかによって、適した心電図検査は変わります。

家庭血圧計やスマートウォッチで心房細動が疑われることも
最近では、家庭血圧計の「不整脈マーク」や、スマートウォッチなどのウェアラブル端末をきっかけに心房細動が見つかるケースもあります。こうした機器は、心房細動を見つけるきっかけとして役立つことがあります。
ただし、不整脈の表示が出た=心房細動と確定したというわけではありません。期外収縮など、ほかの不整脈でも脈が不規則になることがあります。
心房細動が疑われた場合には、最終的には医療機関で心電図を確認します。
心房細動が見つかったらどんな検査をする?
心房細動が確認されたら、「心房細動があるかどうか」だけでなく、なぜ心房細動が起きたのか、心臓にどの程度影響が出ているのかを調べます。
心エコー検査
超音波を使って心臓の形や動きを確認します。心臓の収縮力、心房の大きさ、心臓弁膜症の有無などを評価できます。
血液検査
甲状腺機能、腎機能、貧血、電解質などを確認します。甲状腺機能亢進症などが心房細動の原因になっていることもあります。また、抗凝固薬などの治療を検討する場合には腎機能の確認も重要です。
背景にある病気の確認
高血圧、糖尿病、心不全、慢性腎臓病、睡眠時無呼吸症候群などがないかも確認します。
心房細動の治療は大きく3つ考えます
心房細動の治療は、患者さんの年齢、症状、心臓の状態、脳梗塞リスクなどによって異なります。大きく分けると、次の3つを考えます。

1.脳梗塞を予防する
脳梗塞の危険性が高い場合には、「抗凝固薬」と呼ばれる薬を使って血栓ができるのを防ぎます。いわゆる「血液をサラサラにする薬」です。
心房細動があるから全員が飲むというわけではなく、年齢や基礎疾患などから脳梗塞リスクを評価して使用するかどうかを決めます。
2.心拍数を適切に保つ
心房細動によって脈が速くなりすぎている場合には、心拍数を抑える薬を使用することがあります。これを「レートコントロール」と呼びます。
3.正常な脈を保つ
心房細動そのものを止め、正常な脈を維持することを「リズムコントロール」と呼びます。抗不整脈薬を使用するほか、患者さんによっては「カテーテルアブレーション」という治療を検討します。
カテーテルアブレーションは、心房細動の原因となる異常な電気信号に対してカテーテルを使って治療し、心房細動を起こりにくくする方法です。
どの治療が適しているかは、年齢、症状、心房細動の期間、心臓の状態などによって異なります。
詳しい抗凝固療法、薬物治療、カテーテルアブレーションについては、こちらの記事で解説しています。
心房細動は「脈だけ」を診る病気ではありません
心房細動では、不整脈だけでなく、高血圧、肥満、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群などの背景も一緒に管理することが重要です。また、年齢や基礎疾患によって脳梗塞リスクも変化するため、定期的に見直します。
「脈がバラバラ」と言われたら一度心電図で確認を
心房細動は、動悸などの症状から見つかることもあれば、健診や家庭血圧計をきっかけに偶然見つかることもあります。症状がない場合でも、心房細動が続いていれば脳梗塞や心不全につながる可能性があります。
一方、「脈が乱れている」だけで必ず心房細動とは限りません。期外収縮など、別の不整脈であることもあります。
健診で心房細動を指摘された、家庭血圧計で不整脈表示が繰り返し出る、動悸や脈の乱れを感じる場合には、一度心電図で確認してみるとよいでしょう。
参考文献
- 日本循環器学会・日本不整脈心電学会. 2024年JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療.
- 日本循環器学会・日本不整脈心電学会. 2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン.
- Van Gelder IC, et al. 2024 ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation. Eur Heart J. 2024;45:3314-3414.
- Joglar JA, et al. 2023 ACC/AHA/ACCP/HRS Guideline for the Diagnosis and Management of Atrial Fibrillation. Circulation. 2024.
この記事の執筆・監修者

乾 恵輔(いぬい けいすけ) 乾小児科内科医院 院長
【保有資格】
- 日本循環器学会認定 循環器専門医
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
- 日本内科学会認定 総合内科専門医
院長よりメッセージ: 心房細動は症状がなくても脳梗塞や心不全につながることがあるため、健診や家庭血圧計で指摘された場合は放置せず、一度ご相談ください。
【循環器内科のご案内】
当院では、循環器専門医が心電図・心エコーによる評価から、脳梗塞リスクの評価、治療まで対応しています。健診で心房細動を指摘された方、脈の乱れが気になる方は、お気軽にご相談ください。
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